第144章 【144】二人の男が喧嘩を始める2

橋本健太は殴られて体全体がよろめき、もう少しで転びそうになった。

南条陽凌は一歩前に出て、彼の襟をつかみ、何も言わずにすぐさらにもう一発パンチを繰り出した。

その動きは、速く、正確で、容赦なかった。

橋本健太は地面に倒れた。

抵抗もせず、もがくこともなかった。

恨みの気持ちさえなかった。

あるのは、ただ親友への謝罪の気持ちと、心の中の心配と不安だけだった。

南条陽凌は歯を食いしばり、さらに彼を殴ろうと駆け寄った。

そのとき、背後から悲鳴が聞こえた。

「お兄ちゃん、もうやめて!」南条慶悟はハイヒールで駆け寄り、南条陽凌の腕をつかんだ。

南条陽凌は振り返って南条慶悟を見た。

陰鬱な目で、数秒間呆然としていた。

最終的には、慶悟の懇願する目の前で、手を引っ込めた。

南条慶悟は橋本健太の上に身を投げ出した。

「健太……大丈夫?大丈夫でよかった!」南条慶悟は泣きながら、地面に膝をつき、橋本健太をしっかりと抱きしめた。

橋本健太は彼女に抱かれるままに、木のように無表情で、落ち込んだ様子だった。

南条陽凌は目を伏せ、自分の情けない妹を見つめた。

目には諦めの色が浮かんだ。

彼は一歩後ろに下がり、壁に寄りかかって立ち直った。

そして南条慶悟と同時に現れたのは南条飛鴻だった。

南条飛鴻は南条陽凌の腕をつかみ、焦って尋ねた。「暖香ちゃんはどうした?暖香ちゃんは怪我をしたのか?」

南条陽凌は冷たく南条飛鴻を見た。

何も言わず、彼を振り払い、一人で椅子に座った。

両手で額を支えていた。

南条飛鴻は何かを察し、手術室のドアの前に駆け寄った。

狂ったように力強くドアを叩いた。

「暖香ちゃん……何かあってはいけない!死んではいけない!必ず生きて……」

数人の看護師が駆け寄って南条飛鴻を引き離した。

「先生、中では手術中です。どうか落ち着いてください!」

「誰がやったんだ?誰がこんなことを!俺はその家族を皆殺しにしてやる!」南条飛鴻は看護師を振り払い、涙を流しながら、理性を失って大声で叫んだ。

このとき、南条陽凌の副官である辛島守人が前に出て、南条飛鴻に言った。「すでに調査に人を派遣しました。飛鳥坊ちゃま、どうか落ち着いてください。若奥様は運の強い方です。きっと大丈夫ですよ!」

南条慶悟は橋本健太を支えて椅子に座らせた。