「皇太子様、ご安心ください。若奥様はきっと大丈夫です」
南条陽凌の様子を見て、藤田様樹も胸が痛んだ。
しかし、優れたボディガード訓練を受けた彼は知っていた。この状況では、さらに慌ててはいけないということを。
帝様にいかなる圧力もかけてはならない。
病院の入り口では、医師と看護師が準備を整え、すぐに駆け寄って夏野暖香をストレッチャーに乗せ、病院内へと運び込んだ。
夏野暖香はついに手術室へと運ばれた。
南条陽凌と橋本健太、そして助手が手術室の外で待っていた。
橋本健太の酔いはすっかり覚めていた。
彼は壁に手をついていたが、まだ現実に戻れないようだった。
一方、南条陽凌は椅子に座り、全身から絶対的な冷血な殺気を放っていた。
傍らの藤田様樹に命じた。
「調査しろ!誰が熊の心と豹の胆を食ったような大胆さで、俺の南条陽凌の人間に手を出したのか見てやる!」この言葉は、歯の隙間から絞り出すように言った。
黒幕が見つかれば、どのような結末が待っているか想像に難くない。
「はい!皇太子様、ご安心ください。すぐに調査します!」藤田様樹は恭しく言い、命令を受けて去った。
南条陽凌は少し疲れたように目を閉じた。
もう何年も、こんなに興奮し激怒したことはなかった。
さっき車の中で、彼女を抱えて車から降りた時、自分の両足が少し震えているのを感じた。
帝国財閥全体に対峙する時も、かつて黒社会で人を殺すことに慣れた凶悪犯に対峙する時も、彼は一度も瞬きすることはなかった。
たとえ誰かが銃口を彼に向けても。
彼は一度も恐れたことがなかった。
しかし今日、彼は初めて恐怖の感覚を本当に体験した。
それは、心の中の何かが空っぽになりそうな恐怖だった。
外界のどんなものよりも、はるかに激しいものだった。
南条陽凌は片手を強く握りしめた。
自分を落ち着かせるよう強いた。
長い時間が経ち、ようやく目を上げて橋本健太の背中を見た。
「彼女はどうして怪我をしたんだ?」彼の口調は一見冷静だったが、その冷静さの中には、陰鬱さと恐ろしさが隠されていた。
これは初めて、彼がこのような口調で橋本健太に話しかけた。
橋本健太の体は、徐々に緊張していった。
彼の頭の中は、南条陽凌のものよりも百倍も混乱していた。