第257章 【257】橋本さんと閉じ込められて3

しかし、彼女はまた昔のことを思い出した。彼女が他の子とブランコを取り合った時、いつも人に優しい南條漠真が、彼女を笑った男の子たちに向かって拳を振り上げた瞬間を。

そう考えると、彼はおそらく変わっていないのだろう。

ただ、彼女の南條漠真は成熟したのだ。彼はすでに多くのことを自分で操ることができるようになり、以前のように一つのブランコのために、朝四時に起きて彼女のために並ぶ必要はなくなった。

あの日々は、とても苦しかったけれど、同時にとても楽しく幸せだった。

視界がまた一度ぼやけ、目の前の男の五官もぼやけて、輪郭だけが残った。かすかに、冷たい指先が彼女の頬に触れ、そっと彼女の顔の涙を拭い取った。

「泣かないで」少しかすれた声で彼は言った。

夏野暖香は彼の手のひらの温もりを感じ、突然手を伸ばして、その手を掴みたくなった。

そして何も考えずに彼に真実を告げたくなった。

しかし、その思いは心の中で小さな炎として燃え上がったが、すぐに理性によって消し去られた。

彼女はそんなに自分勝手になれない、無責任になれない。

彼女は夏野家を気にしなくてもいい、すべての倫理道徳を気にしなくてもいい。

でも、目の前の男のことを気にしないわけにはいかない。さらに、彼が今持っているすべての素晴らしいものを、自分の手で破壊することはできない。

車は環山通りに静かに停まり、一筋の視線が彼女をじっと見つめていた。

それは彼女がずっと渇望していた慈しみの眼差し、ずっと夢見ていた視線だった。

しかし、この瞬間、心は耐えられないほど痛んだ。

夏野暖香は頭を垂れ、涙が男の手の甲に落ちるままにした。

「大丈夫よ、ありがとう」彼女は顔をそむけ、淡々と言った。

男の目に複雑な色が過ぎり、静かに自分の手を引いた。

ただ、二人とも予想していなかったことに、車が十数分走ったところで、車の窓の外で突然大雨が降り始めた。

大雨は急に激しく降り出し、「ぴちゃぴちゃ」と車の窓を叩いた。

土砂降りの雨とともに、道はますます通りにくくなり、二人の進む道は塞がれてしまった。橋本健太もこの地形に詳しくなく、結局車を引き返させ、何周かして、やっと街角で唯一灯りのついている家を見つけた。