第347章 【347】まさか彼女は毒に中ったのか3

藤田抑子は体が硬直した。

「帝様、あなたの言いたいことは……」

「昨夜、私たちは一緒にいた!」南条陽凌は多くを語らず、断固とした肯定の答えを与えた。

藤田抑子はいつも冷静さを保っていたが、この事を聞いて、思わず息を呑んだ。

若様が昨夜、あの女性と一緒だったなんて?!

彼の知る限り、若奥様が記憶喪失になって以来、若様はほとんど他の女性に手を出していなかった。

自ら近づいてくるモデルたちに対しても、ただの社交辞令で、若様のほぼすべての心は若奥様に向けられていた。

若奥様以外に、若様が話す時に目に笑みを浮かべる女性は一人もいなかった!

しかし、今、若様は目に笑みを浮かべているだけでなく、全身から強い男性ホルモンを発散しているようだった。

まるで、失くして再び見つけた宝物を手に入れた少年のように!

藤田抑子は若奥様のことを思い、心の中で冷や汗をかいた。

「では帝様……あなたと彼女は……?」

南条陽凌は身を翻し、彼に背を向けた。その背中には何故か寂しさと諦めが滲んでいた。

「今朝目覚めたら、もういなくなっていた。」

これを聞いて、藤田抑子は心の中でほっと息をついた。

しかし、思いがけず南条陽凌がまた口を開いた。「彼女を探し出せ。今度こそ、必ず彼女を見つけ出す!」

藤田抑子の右まぶたがピクリと動いた。

下げていた片手が、軽く拳を握った。

本能的に、この期間、心の中では夏野暖香を若奥様として受け入れていた。

突然、若様がこれほど熱心に別の女性を求めている。

藤田抑子の胸は、なぜか息苦しく感じた。

しかし帝様の命令には、彼はただ従うだけだった!

「はい、帝様、すぐに手配します!」

藤田抑子はそう言って、すぐには立ち去らなかった。

南条陽凌は我に返り、冷たく彼を見つめた。

「他に何か?」

「帝様……一言、申し上げてもよろしいでしょうか……」

南条陽凌は立ち上がり、デスクの前に歩み寄った。

長身の姿、目には突然疲れの色が浮かんでいた。

手を伸ばし、胸をさすった。

「言ってみろ……」

「あなたが……あの少女を見つけたら、若奥様は……」

「お前がそれを聞くと思っていた。」南条陽凌は目を閉じた。「その問題も考えている……しかし、今は、そんなことを考えている余裕はない!」