第350章 【349】解毒薬はどこに1

「大丈夫よ……」夏野暖香は立ち上がり、武田達也が本を元の棚に戻すのを見ていた。

武田達也:「若奥様、どの本がご覧になりたいか、私に言っていただければ、お持ちしますよ。もしお怪我でもされたら、帝様はきっとまた心配なさいますから!」

夏野暖香は心の中で思った、南条陽凌は今は彼女のことなど心配している余裕なんてないわ!

それでも微笑んで:「大丈夫よ……ただちょっと見てみたかっただけ……」

「……」

「そうだ……」夏野暖香は武田達也を見て、真剣に考えながら言った:「さっき帝様から電話があったの……」

「……」武田達也は我に返り、夏野暖香を見つめ、少し戸惑った。帝様が若奥様に電話をしたことを、なぜ自分に報告するのか理解できなかった。

「へぇ……帝様は若奥様と別れたばかりなのに、もう電話をかけてくるなんて、帝様は本当に若奥様を愛していらっしゃるんですね!」武田達也は心の中でつぶやきながらも、機会を逃さず媚を売った。

夏野暖香:……

「南条陽凌があなたに伝えてほしいって言ってたの。昨晩のことは重大だから、あなたと部下たちは今日特に注意して、もう誰も侵入させないようにって……」

武田達也はそれを聞いて、表情が変わった。

すぐに姿勢を正し、真剣な様子で言った:

「昨晩は確かに武田の不手際でした!帝様がお咎めにならなかったことだけでも、私は幸運です……だから今日は、絶対にミスを犯しません!ご主人様と若奥様にはどうかご安心ください!」

「ほら、さっきも書斎で物音がしたので、すぐに飛び込んできたんです!」

夏野暖香は武田達也の真剣な表情を見て、目尻がピクリと動いた。

咳払いをして、続けた。「帝様はね、解毒薬をしっかり見張るようにとも言ってたわ。今日はきっとあの悪者がまた解毒薬を盗みに来るかもしれないって!」

「えっ——?」

武田達也は夏野暖香を見つめ、頭をかきながら、雷に打たれたような表情をした。

「い、いや……そんな……ご主人様が本当にそんなことを武田に言ったんですか?」

夏野暖香は眉を上げ、怒ったように言った:「もちろんよ?私があなたに嘘をつくと思う?」