第390章 若奥様はわがまま

車は市街地に戻り、夏野暖香は遠くで多くの車が検問されているのを見た。

急いで佐藤陽介に言った。「ここで降りるわ。タクシーで帰るから大丈夫。」

佐藤陽介は少し考えてから、車を路肩に停めた。

夏野暖香はドアを開けて笑いながら言った。「昨夜付き合ってくれてありがとう。」そう言うと、急いで車を降り、道端に走って行き、タクシーを止めた。

佐藤陽介は車の中に座り、夏野暖香がタクシーに乗るのを見ていた。

タクシーはUターンして、別の方向へ走り去った。

佐藤陽介は眉を上げた。

この女、なかなか賢いじゃないか。

……

しかし、夏野暖香が予想していなかったのは、車が一つの交差点を曲がったものの、次の交差点でまた止められてしまったことだった。

数人の交通警官がそこで写真を持ち、車内の夏野暖香と見比べていた。

夏野暖香を見て、また写真を見た。

すぐに、目が輝いた。

宝物でも見つけたかのように、遠くで検問している交通警官に向かって飛び跳ねながら大声で叫んだ。「見つけました！皆さん早く来てください、見つかりました！」

夏野暖香は一瞬にして、まるでパンダが見物されているように、交通警官に囲まれて身動きが取れなくなった。

その中の一人の警官隊長は急いで藤田抑子に電話をかけ、成果を報告した。

「はい、藤田様！若奥様を見つけました！はい、非常に安全です！かしこまりました、ご安心ください藤田様……！」正義感あふれる顔つきで受話器に向かってお世辞を言った。

電話を切ると、すぐに人々に離れるよう指示した。

「みんな離れろ、若奥様に迷惑をかけるな！」

「あの……若奥様、お元気ですか？もう……もうすぐ藤田様がお迎えに来られます。お水はいかがですか？寒くありませんか？何か必要なものがあれば何でも仰ってください……」

夏野暖香は車の中に座り、イライラした様子で手を振った。

「私は大丈夫だから、あなたたちは離れていてくれればいいわ。」

警官隊の顔に一瞬の恥ずかしさが浮かんだ。

前の運転手は呆然としていて、口を大きく開けたまま、自分が乗せたのがこんな大物だとは全く予想していなかった！

警官隊は拡声器を持って運転手に向かって言った。「何を見ているんだ？早く降りろ！若奥様を一人にしておけ！」