夏野暖香は簡単なTシャツとショートパンツに着替えて、やっと少し楽になった。
部屋を出たとき、橋本健太の姿は見えなかった。おそらく出かけたのだろう。夏野暖香はそう思いながら、一つ一つの部屋を見て回った。
ここのデザインはとても洒落ていて、小さな独立したキッチンまであり、オーブンや製菓道具まで一式揃っていた。
夏野暖香はキッチンを出ると、小さな休憩室があった。床には涼しげなゴザが敷かれていて、休憩や会話をしながら海を眺めるためのスペースだろう。
外には小さなテラスもあり、そこにはさまざまな植物が植えられていた。
夏野暖香は新鮮な空気を吸い込み、全身がリラックスしてきた。
バルコニーの隣には角があり、白い洒落たアーチ型のドアがあった。そこにはタイ語で何か書かれていたが、彼女には読めなかった。そっとドアを押し開けた。
空気中にかすかな香りが漂い、霧のような蒸気が顔に当たった。
中の光景を見たとき、彼女は完全に固まってしまった。
ちょうど入浴中だった橋本健太も、物音に振り向いた瞬間、呆然としていた。
手にはハート型の石鹸を持ち、体には泡がついていた。夏野暖香の視線は思わず彼の裸体を走った。彼は背が高くスラリとしていて、普段は儒雅に見えるのに、意外と筋肉質な体つきをしていた。
太すぎず痩せすぎず、ただ...あそこが...泡がついていたものの、完全に見えてしまう...かなり誇張的に彼女の前に露出していた。
これまで夏野暖香は彼に対して、まったくエロティックなことを考えたことがなかった。
でも今日、彼女は自分の運命にこの一幕があったのだと感じた。南條漠真に対して...初めての経験をしてしまった...
彼女は数秒間呆然とした後、同じく驚いている橋本健太の水滴の垂れる端正な顔、まるで銃で撃たれた小鹿のような驚愕の表情を見て、全身が凍りついた。悲鳴を上げてから、ようやく身を翻した。
「ご、ごめんなさい...わ、私はわざとじゃなくて...」夏野暖香は取り乱して謝った。
そして背後からザバザバという水音の中、ゆっくりと心地よい男性の声が聞こえてきた。「だ...大丈夫だよ...」
大ー丈ー夫ーだーよ!!!
夏野暖香は頭上で雷が鳴り響いたかのように、頭の中にいくつもの疑問符が浮かんだ。
な...なんて寛大なの、南條漠真ー!
うう、感動すべきなのかな?