第599章 プーケット島の甘い時間

夏野暖香が目を覚ましたときには、すでに夕方になっていた。

起き上がってぼんやりとお風呂に入り、出てきたとき、橋本健太はリビングのソファに座ってノートパソコンを打っていた。端正な顔つきで画面を見つめ、一心不乱な様子だった。

夏野暖香はバスタオルを巻いて彼の前を通り過ぎようとした。彼の邪魔をしないようにと思ったが、橋本健太は物音に気づいて顔を上げ、彼女を一目見ると、そのまま彼女に視線を固定した。

彼女は彼に微笑みかけた。「お仕事中?」と言ってから、何か余計なことを言ったような気がした。

彼は彼女をじっと見つめ、30秒ほど経って、ようやく我に返ったかのように、テーブルの上のフルーツジュースを彼女に差し出し、少し不自然に言った。「お風呂終わった?後で支度して、ちょっと出かけよう。」

夏野暖香は足の指でビーチサンダルをこすりながら、赤い顔でジュースを受け取り、うなずいてから急いで寝室に戻った。

異国情緒あふれる小島は、他の一般的なリゾートアイランドとは全く異なる雰囲気だった。

二人は柔らかい白い砂の上を歩いていた。彼女はTシャツとふんわりとしたデニムスカートを着ていた。スカートはスーツケースの中で少しシワになっていて、彼女は目の前の美しい景色を観察しながら、無意識のうちに自分のスカートの裾を引っ張り続けていた。まるで後ろが見えてしまうのではないかと心配しているようだった。

振り返ると、橋本健太もショートパンツとTシャツだけを着ていて、まるで大きな男の子のようだった。

彼が顔を下げると、視線がちょうど彼女の視線とぶつかった。

彼の眼差しは優しく穏やかで、まるで目の前の海のようだった。そして彼は自然に手を伸ばし、彼女の小さな手を握った。

ビーチに沿って長い木の橋があり、二人は小さな橋の上に来た。橋の下には照明が灯され、海の中のカラフルなサンゴ礁の群れと、その間を悠々と泳ぐ色とりどりの熱帯魚がかすかに見えた。

夏野暖香はしゃがみ込み、網状の隙間から冷たい海水に手を入れると、すぐに魚たちが寄ってきて彼女の指を突っついた。橋本健太も彼女の隣にしゃがんで彼女を見ながら笑った。「気をつけて、エイに手を噛まれないように...」

エイ?