第584章 私の元に戻ってきて1

「もし……言いたくないなら、それでもいいよ」橋本健太は彼女が困っているのを見て、笑いながら言った。「先に行くね。何か必要なことがあったら、必ず私を頼ってね、わかった？」

夏野暖香はようやく頷いた。「ありがとう……」

橋本健太は彼女の顔色が少し青白いのを見て、片方の眉を上げ、彼女に向かってリラックスした茶目っ気のある笑みを浮かべた。夏野暖香も思わず笑った。

彼が自分の車に向かって歩いていくのを見ながら、彼女は手を振り、すぐに身を翻した。

振り返った瞬間、目から抑えきれない涙があふれ出した。

南條漠真……

あなたはすべて知っているのね、そうでしょう？

きっとそうよ、あなたの目から、私は答えを知ったわ。

でも……今、私はあなたにどう向き合えばいいのかわからない。

彼女は一歩一歩病院に戻りながら、まるで中身を空っぽにされたような気分だった。

……

橋本健太は車の中に座った。

暖香ちゃんの去っていく後ろ姿を見つめながら、心が突然激しく痛み始めた。

なぜ本当のことを言ってくれないんだろう？

七々、君は一体何を言い出せないでいるんだ？

こんなにはっきり言ったのに、まだわからないのか？君の一言さえあれば、僕は何でも君のためにするのに。

橋本健太はハンドルを握る手に、少しずつ力を込めていった。

突然、何かを思いついたように。

携帯を取り出し、電話をかけた。

……

テニスコート。

南条飛鴻と橋本健太は激しくラリーを続けていた。二人は三回戦を行い、橋本健太は三回とも負けていた。

しかもボールは特に強く打たれていた。

最後に二人は地面に倒れ込んだ。

「健太、今日はどうしたんだ？テニスに誘っておいて、全然調子が出てないじゃないか？！」南条飛鴻はヘアバンドを頭に巻き、額の汗を拭いながら、荒い息で言った。

橋本健太は地面に横たわり、その端正な顔の額にも汗が浮かんでいた。

「そうかな？」

「もちろんだよ！」南条飛鴻は肩で彼を軽く突いた。「もしかして何か思い出したんじゃないか？蒋田雪のことでも？」

「いや」橋本健太は沈んだ声で答えた。