しかし……何をしても無駄だ。
そうだ、今一番重要なのは、暖香ちゃんを救い出すことだ……
橋本健太はもう何も言わなかった。
南条陽凌は言った。「船の準備をしろ……」
「はい……」藤田抑子はすぐに答えた。
……
「あなたたち何をするつもり?」草小屋の中は、草や低木の香りで満ちていた。夏野暖香は古びた椅子に縛り付けられていた。
これは廃屋となった草小屋で、屋根が破れており、頭上には大きなヤシの木が見えた。
一人の男が外から入ってきて、爆発装置を彼女の足に取り付けた。
「これは時限爆弾だ。動かないほうがいい。さもないと粉々に吹き飛ばされるぞ!」その男は歯を食いしばり、凶悪な表情で言った。
夏野暖香の体は激しく震えた。
「あなたたち……私を放して……やめて……助けて——!」彼女は必死にもがいたが、二人の男に強く押さえつけられた。
テープが彼女の口にきつく貼り付けられた。
「んん……んん……」彼女は声を出せず、唸るしかなかった。
「親分、この作戦は最高です!思いもよりませんでした。苦労して探していたものが、こんなに簡単に手に入るなんて!南条陽凌に復讐したくても方法がなかったのに。今、この女が自ら罠に飛び込んできたんです!」
山下一郎はテーブルの端に座り、片足をテーブルの上に乗せ、口にタバコをくわえたまま、夏野暖香に向かって煙を吐きかけた。
冷笑しながら言った。「この女は男を誘惑するのが上手すぎるとしか言いようがない。他の男と密会に出かけるような女のために、緑の帽子(浮気された夫)をかぶった南条陽凌がまだ彼女の命を気にかけるとはな!
ふん、美女は災いの元と言うが、今日、南条陽凌は彼の美女のために、命を落とすことになるだろう!」
夏野暖香はその言葉を聞き、信じられないという表情で目を見開いた。
整った顔に、不安と疑問が浮かんだ。
南条陽凌が本当に自ら彼女を救いに来るのだろうか!そうなれば、死にに来るようなものではないか?
この連中は、彼を害そうとしているのだ!
「んんん……」彼女は必死にもがいたが、その報いは強烈な平手打ちだった。
「パン!」頬の半分が腫れ上がり、彼女は顔を横に向けた。
「この女め、大人しくしていろ。さもないと今すぐ極楽浄土に送ってやる!」山下一郎が飛びかかり、激しく罵った。