藤原輝矢はまた不真面目な様子に戻り、ニヤニヤと木村響子を横目で見た。「君もなかなかやるじゃないか、アカデミー主演女優賞ものだよ。どうだい、転職を考えてみては?女優になったらどうだ」
木村響子はしばらくして、藤原輝矢が先ほどの彼女の演技に入り込みすぎたことを冗談っぽく言っていることに気づいた。怒ることもなく、「それも私たちの藤原次男様に合わせるためですよ。でも話は変わりますが、なぜ業界の人はあなたを藤原次男様と呼ぶんですか?もしかして家族の次男なの?」
「Bingo!」藤原輝矢は指を鳴らした。「俺の上には兄貴がいるんだ」
兄の話になると、藤原輝矢は頭が痛くなった。多くの幼馴染や親戚たちは彼が父親を恐れていると思っているが、実は彼の家では、兄こそが恐ろしい存在だということを知る人は少なかった。
車に乗り込むと、木村響子は突然あることを思い出して尋ねた。「明後日のファッションアワードにも行くでしょ?」
藤原輝矢は眉を上げ、続きを待った。
「一緒に行かない?」
「興味ないね」
「行こうよ行こうよ、私たちが一緒に現れたら、注目度はもっと高くなるわ」
「俺が他人の注目を必要とするか?」注目されないようにするのが難しいくらいだ。
「あなたは人気者だから、確かに注目度に困ることはないわね」
「君は困ってるのか?」
「多ければ多いほど良いじゃない。注目度が高いほど良い広告契約が取れるの。最近、私は山田百恵と広告契約を争っているところなの」二人とも国際的なモデルで、互角の実力を持ち、競争は白熱化していた。
「それが俺と何の関係がある?」藤原輝矢は業界内のそういった駆け引きを最も軽蔑していた。
「ねえ、今は私があなたの彼女でしょ!」木村響子は切り札を使った。
そういうわけで、藤原輝矢は最終的に木村響子の要求を受け入れた。
林薫織はちょっと理解できなかった。つい数日前まで藤原輝矢は自分に対して素っ気なかったのに、なぜ今日は突然自分を引っ張ってファッションアワードに参加させようとするのか。
やはり、この男の脳の構造は普通の人には理解できないもので、変わるときはすぐに変わり、まさに風よりも捉えどころがない。
「君はこの格好で行くつもりか?」藤原輝矢は嫌悪感たっぷりの目で林薫織の服装を見つめた。