電話を切った時、林薫織の顔から安堵の表情が消え、心に暗い影が覆いかぶさった。さっき彼女は藤原輝矢に嘘をついて、実は藤原の母が彼女を訪ねてきたことを告げなかった。
藤原の母が去る時の表情を思い出し、林薫織はこの件がこれで終わるとは素直に思えなかった。彼女の予想は的中し、すぐに藤原輝矢の家族が再び彼女を訪ねてきた。ただし今回は礼儀正しく接するのではなく、彼女を直接車に「拉致」したのだった。
朝食を済ませた後、林薫織は再びセイント病院へ向かった。彼女は自分の努力で木村泉の家族を説得し、林の母を救うことに同意してもらいたいと願っていたが、結果は思わしくなく、再び何の成果も得られずに戻ってきた。
セイント病院を後にする時、林薫織は少し落ち込んでいた。どうすれば木村泉の家族の心を動かすことができるのだろうか?