第235章 兄さん、どうしてここに来たの？

「兄さん、どうしてここに？」

「母さんが帰ってくるように言ってたんだ」

「帰らないよ、彼らが薫織に対する態度を変えない限りは」

男の顔が曇り、低い声で言った。「輝矢、もう子供じゃないんだから、そんなにわがままを言うな」

「大人になったからこそ、自分の結婚は自分で決めるべきだ」

「結婚は二人だけの問題じゃなく、二つの家族の問題だ」

「そうだね、それがどうした？兄さん、帰ってくれ。ついでに父さんと母さんに伝えてほしい。もし彼らが本当に私と薫織が一緒にいることが藤原家の名誉を汚すと思うなら、息子なんていないと思ってくれていい」

「そんなことを言えば、両親の心を傷つけることになる」

「ああ、わかってる。でも、両親だって私の心を傷つけているじゃないか。好きな人と一緒にいたいと思うのが、何が悪いんだ？それに、薫織がどんな人か私はよく知っている。彼女は彼らが思っているような人間じゃない。それに、父さんが一番気にしているのは薫織という人間ではなく、薫織の父親の身分だ。薫織の父親の黒い過去が彼の政治的なキャリアに影響を与えるかどうかを心配しているだけだ！」

「本当に一人の女性のために両親と決裂するつもりか？」

「望んでいるわけじゃない、彼らが私を追い詰めているんだ」

藤原哲男は薄い唇を固く結んだ。彼を知る人なら誰でも、これが彼が怒りを感じている兆候だとわかるだろう。藤原輝矢ももちろん知っていた。以前なら、彼はきっとすぐに尻尾を巻いて、謝って許しを請うところだが、今回は彼は立場を固持した。

もし、愛する女性のために戦う勇気さえなければ、彼藤原輝矢はどんな男だというのか！

これが楽しい会話になるはずがないことは明らかだった。藤原哲男は何を言っても無駄だとわかっていた。弟は完全に取り憑かれていた。

彼は自分の親族に手を出したり策を弄したりはしないが、他人に関しては彼の考慮の範囲外だった。

……

林薫織が病院に戻ったとき、林の母はまだ目を覚ましていなかった。彼女は少し驚いた。以前ならこの時間には、林の母はとっくに起きているはずだった。でもこれはこれでいい、こうすれば彼女も夜を家で過ごさなかった理由を説明する必要がなかった。

彼女が林の母の朝食を買いに下の階に行って戻ってきたとき、林の母はちょうど洗面所から出てきたところだった。