藤原哲男の予想通り、数日後、藤原輝矢は自分で戻ってきた。藤原夫人は息子が帰ってきたのを見て喜びを隠せなかったが、それでも心配で、医者に藤原輝矢の全身検査をさせた。
「藤原夫人、藤原さんの怪我は大したことありません。ご安心ください」
医者の言葉を聞いて、藤原夫人はようやく胸をなでおろしたが、藤原輝矢がやせたのを見て、やはり心配せずにはいられなかった。
「この数日間どこに行っていたの?どうしてこんなに痩せたの?」
「どこにも行ってないよ、ただぶらぶらしてただけ」藤原輝矢の口調はいつものようにだらけていて、何も異常はないようだった。
「お手伝いさんに鶏のスープを作ってもらったわ。後で飲みなさい。この何日か外にいて、外食ばかりじゃ栄養が足りないでしょう。しっかり補わないと」
「はいはいはい、母さん、スープはすぐ飲むよ。先に出ていってくれない?疲れたから少し寝たいんだ」
「わかったわ、先に出るわね。スープは必ず飲むのよ」
藤原夫人は心配そうに病室を出て、廊下で部隊から駆けつけてきた藤原哲男に会った。藤原哲男が側にいる警備員に「廊下のボディガード以外は全員引き上げていい」と言うのが聞こえた。
それを聞いて、藤原夫人は心配そうに言った。「ボディガードを引き上げたら、弟がまた抜け出すんじゃないの?」
「もうしないよ」なぜなら、彼を外に出す理由がもうないからだ。
藤原夫人は半信半疑だった。「あなた、自信があるの?もし弟がまた抜け出して、何か問題があったら、許さないわよ」
「母さん、僕のやることを信じてないの?それに、輝矢はもう大人だよ。自分の考えで行動する。本当に出て行きたいなら、このボディガードたちで止められると思う?」
藤原夫人もそうだと思った。前回も藤原輝矢に逃げられたではないか。
藤原夫人を安心させたのは、藤原哲男の言った通り、藤原輝矢が病院に戻ってからは、退院を騒ぎ立てることもなく、林薫織の名前を一度も口にしなかったことだった。
松根は藤原輝矢の怪我が徐々に良くなってきたのを見て、インタビューなどの軽い仕事を彼のために手配し始めた。