第三百四十八章 本音?それとも大冒険?
「私には心がないと思ってくれていいわ」林薫織は椅子から立ち上がった。手首に痛みを感じたが、それは心の痛みの万分の一にも満たなかった。
ここはもう安らぎの場所ではない。彼女はもうここにいられなかった。
リビングに戻ると、巻島一也の声が聞こえてきた。「薫織、さっきどこに行ってたの?ずっと探してたのよ」
「裏庭を散歩してきたの。食後の運動に」
「うちの裏庭に魅了されたのね。今度あなたが帰ったら、氷川社長にもあなたのために作ってもらったら?」
林薫織は思わずソファに座っている氷川泉を見た。もし彼女と氷川泉の関係が単なる隠れた関係に過ぎないのなら、氷川泉がどうして彼女のためにそこまで心を砕くだろうかと思った。
氷川泉は終始冷静な表情を保ち、少し心ここにあらずといった様子だった。ただ、藤原輝矢がリビングに入ってきた瞬間、その冷静な表情が一気に冷たくなった。木村響子も藤原輝矢が入ってくるのを見ると、彼に数秒視線を向けた後、林薫織に視線を移し、あまり嬉しそうではなかった。
部屋の中の人々はそれぞれ思うところがあったが、巻島一也だけは何も気づかず、笑いながら提案した。「みんなでリビングでただ顔を見合わせているのも面白くないわ。ゲームでもしない?」
「どんなゲーム?」藤田社長は妻の顔を立てた。
「真実か挑戦かはどう?」
「いい年して、まだそんなことするの?」
「何よ、いい年してって。私たちみたいな年齢だってこういうゲームができないわけじゃないでしょ?若い人たちだって外で遊ぶとき、暇つぶしにこういうゲームするじゃない。薫織、響子、そうでしょ?」
「面白そうだと思うわ」木村響子は藤原輝矢をちらりと見て、目に光るものがあった。
藤田逸真は巻島一也に対していつも無条件に甘かったので、最終的にはもちろん妥協して参加することになった。今や藤原輝矢、氷川泉、林薫織の三人だけが返事をしていなかった。
藤原輝矢はポケットに両手を入れ、ソファにだらしなく寄りかかり、口元を歪めて言った。「I'm in!」
氷川泉は遠くにいる林薫織をじっと見つめ、頷いた。そして林薫織は、最後には強制的に参加することになった。
「素晴らしいわ!じゃあ始めましょう!」