第348章 お前という女は、心がない

氷川泉は彼女を深く睨みつけたが、彼女を止めることも、その場で彼女を困らせることもしなかった。これに林薫織は長く息をついた。

レストランを出ると、彼女はリビングにとどまらなかった。彼女にとって、そこの空気はあまりにも重苦しく、息苦しく感じられた。彼らがもう少しそこにいると思い、林薫織は一人で先ほどの裏庭に行き、そこで座って空気を吸おうと決めた。

春が来ると、天気は徐々に穏やかになってきたが、昼夜の温度差が大きく、屋外ではまだ少し肌寒く感じた。林薫織は一人で裏庭のプールサイドのベンチに座っていた。

冷たい風が彼女の顔を撫で、彼女に寒さを感じさせたが、彼女は戻りたくなかった。なぜなら、そこには彼女が最も会いたくない人と、彼女が最も向き合う勇気のない人がいたからだ。

彼女はぼんやりとプールの水を見つめ、どれくらいの時間が経ったのか分からなかったが、背後から足音が聞こえてきた。まるで心が感応しているかのように、彼女はその足音から誰が来たのか分かった。

彼女は振り返る勇気もなく、全身を緊張させ、ベンチに動かずに座り、その人が通り過ぎることを願ったが、足音はどんどん近づいてきた。

突然、背後から男性の低く魅惑的な声が聞こえた。「林薫織、久しぶりだな。」

聞き慣れた声だったが、彼女にとって非常に見知らぬ口調で、彼女を動揺させた。彼女が途方に暮れている間に、男性は既に彼女の前に来ていた。

「どうした、旧知の間柄なのに挨拶もしないのか?」

今度は、林薫織は顔を上げざるを得なかった。彼女の視線はゆっくりと上がり、最後にその見慣れた魅力的なハンサムな顔に落ち着いた。彼の顔にはいつものように不真面目な笑みが浮かんでいたが、その笑顔の下には冷たさと距離感が透けて見えた。

林薫織の心は痛く刺され、彼女は強引に唇の端を引き上げ、しばらくして自分の異常なほど落ち着いた声を聞いた。「藤原さん、お久しぶりです。」

「ああ、確かに久しぶりだな。」男性は軽く鼻を鳴らし、彼女を上から下まで見た後、最後に彼女の顔に視線を落とした。「服装のセンスは確かに上がったな。彼の側にいると、良い暮らしをしているようだ。」