「どうして少し違うの?」林薫織の視線が自分の買い物袋に落ちるのを見て、巻島一也は微笑んだ。「私がケチだと思った?」
「いいえ、違います!」林薫織は慌てて首を振った。
「あなたが私をケチだと思っても構わないわ。私は服は見た目が良くて、品質が良ければ、ブランドにこだわる必要はないと思うの」そう言いながら、巻島一也は突然林薫織に近づき、小声で言った。「実は、有名デザイナーがデザインした服って、結構ダサいと思うの」
林薫織は巻島一也の言葉に笑ってしまった。でも巻島一也の言うことも間違いではなかった。有名デザイナーがデザインした服は、誰もが着こなせるわけではなく、一歩間違えると偽物っぽく見えてしまうことがある。
二人は談笑しながら、最後に国際的に有名な紳士ブランドの店に入った。林薫織は当然、巻島一也がここに来たのは藤田逸真に服を買うためだということを知っていた。