第375章 藤原輝矢、私を連れて行って

車は古城の外に停まり、二人は古城から出てきた。藤原輝矢は振り返って林薫織に言った。「ここで待っていてくれ。車を持ってくるから」

林薫織はうなずき、男の後ろ姿を見つめた。藤原輝矢はとても背が高く、彼女より丸々一頭分は高かった。長年フィットネスを趣味としていた彼は、常に素晴らしい体型を維持していたが、薄暗い灯りの下で、彼の後ろ姿はどこか寂しげで物悲しく見えた。

林薫織の指先が微かに震え、藤原輝矢の後ろ姿を見つめながら、言いようのない切なさを感じた。この場所の夜があまりにも静かなせいか、それとも道端の灯りが暗すぎるせいか、林薫織は心の中に築いていた理性が少しずつ崩れていくのを感じた。

そのとき、体はすでに先に選択を下していた。彼女がすべてを理解したときには、すでに彼女は藤原輝矢の名前を大声で呼んでいた。

「藤原輝矢!」

男はふと足を止め、振り返って彼女を見た。その目元には相変わらず魅力的な笑みを湛えていた。「どうしたの、薫織?」

一言の「薫織」が千の言葉よりも雄弁で、彼の笑顔に、林薫織の最後の理性も心から抜け去った。彼女の両足はすでに制御を失い前に進み、歩みはどんどん速くなり、最後には全力疾走となり、ためらうことなく後ろから男をしっかりと抱きしめた。

この数年間、彼女はずっと他人のために生きてきた。でも今回は、すべての重荷を捨て、自分のために一度生きてみたかった。藤原哲男の脅しも、氷川泉の報復も、もうどうでもよかった!

林薫織の突然の抱擁に藤原輝矢はその場で固まった。恋愛のベテランである彼も、ある日、一人の女性のたった一つの行動で途方に暮れることになるとは思ってもみなかった。

「薫織?」

「藤原輝矢、私を連れて行って。今度こそ、もう二度とあなたから離れない」

「本当に?」男は振り返って林薫織を見つめ、困惑しながらも心の底から湧き上がる喜びを抑えきれずにいた。「本当に考えたの?」

「こんなにはっきりしたことは今までなかった。あなたを愛してる、一緒にいたい!」将来何が起ころうとも、彼女は藤原輝矢と共に立ち向かうつもりだった。

藤原輝矢は自分が幻聴を聞いたのかと思い、慎重に口を開いた。「薫織、今の言葉をもう一度言ってくれないか!」