第528章 不思議な親近感

高橋詩織はゆっくりと目を開けた。周りは単調な白一色で、空気中には消毒液の匂いがかすかに漂っていた。彼女はすぐに自分が病院にいることに気づいた。

彼女は天井をぼんやりと見つめ、目を動かしながら、次々と衝撃的な光景が脳裏によみがえった。その鮮明な映像と頬に残る痛みが、これが夢ではなく、実際に起きたことだと彼女に思い出させた。

高橋詩織は突然ベッドから起き上がった。彼女は病院にいる。では氷川泉はどこだろう？彼はあれほど重傷を負ったのに、今はどうしているのだろう？

「お嬢さん、お目覚めですか？」ベッドの向かいのソファから、若い看護師が高橋詩織が目を覚ましたのを見て、すぐに立ち上がった。

「氷川泉は？氷川泉はどこ？彼は今どこにいるの？」

「氷川社長のことですか？ご安心ください、救命処置の結果、氷川社長は命の危険を脱し、現在は隣のVIP病室に移されています。」

それを聞いて、高橋詩織は思わず長いため息をついて、落ち着いた声で尋ねた。「ここはどこ？私がなぜここにいるの？」

「ここはセイント病院です。お嬢さん、もう安全ですよ。」

「セイント？」高橋詩織は眉をしかめた。

誰が彼女をここに連れてきたのだろう？氷川泉？いや、彼ではないはずだ。彼女が意識を失う前に、彼はすでに失血過多で意識を失っていた。となると、彼女をここに連れてきたのは房原城治しかいない。

「房原城治が私をここに連れてきたの？」

「あなたを連れてきた方のお名前は存じませんが、とても背が高くてハンサムな方で、ハーフの方でした。本当にかっこよかったです。」看護師は思わず夢見るような表情になった。

看護師のその言葉を聞いて、高橋詩織は自分の推測が正しいことを確信し、思わず尋ねた。「じゃあ、彼は今どこに？」

「あの方はあなたをここに連れてきてすぐ、少し指示を出してから、去っていきました。」

「そう？」

高橋詩織は眉をしかめ、少し不快に感じた。彼女がこんな状態になったのは、大部分が房原城治のせいだというのに、彼は彼女を病院に連れてきただけで、何も言わずに立ち去ったなんて、この人は本当に...好感が持てない。

不快感はあるものの、今はそれが最も重要なことではない。看護師が氷川泉は命の危険を脱したと言ったが、高橋詩織はまだ安心できず、自分で様子を見に行くことにした。