第556章 変事

その日の午後、小島夕奈から電話があり、神秘的な様子で高橋詩織に自分と松本一郎が付き合い始めたことを告げた。詩織がこのニュースを聞いたとき、実は驚きはしなかった。あの夜バーで、彼女はこの二人の間に何かあることを見抜いていた。二人の間に恋愛感情が芽生えるのは、ごく自然なことだった。

「詩織、今夜一緒に食事しない?」

「いいわよ」最近、彼女は特に予定もなかった。

そして、夜、詩織は三人の約束した場所へ向かった。

食事の席で、松本一郎が夕奈の器に豚の角煮を取り分け、夕奈が笑いながらその角煮を直接松本一郎の口に運ぶのを見て、詩織は不満げに言った。「あのさ、二人ともそこまでしなくてもいいんじゃない?私はまだ独身なのよ。あなたたちがそんなに遠慮なくイチャイチャするなんて、公憤を買うのが怖くないの?」

それを聞いて、夕奈は顔を赤らめた。「あの...私たちがやりすぎだと思うなら、自分も誰か見つければいいじゃない。私たちの社長なんて悪くないと思うけど」

「房原城治のこと?やめておくわ、私はもう少し長生きしたいから」

「うちの社長のどこが悪いの?そこまで避けることないでしょ?」夕奈は不満そうに言った。「あの人は見た目もいいし、家柄もいいし、体型もいい。何より体力があるから、あなたが彼と一緒になれば、絶対に幸せになれるわよ」

夕奈のこの発言に、ちょうど飲み物を飲んでいた詩織はむせそうになった。彼女は激しく咳き込み、やっと落ち着いてから、隣の松本一郎に目を向けた。「松本一郎、夕奈は前こんなじゃなかったわ。あなたが彼女を悪い方向に導いたんでしょ?」

松本一郎は無実を装って肩をすくめた。「これは私とは関係ないよ。本当に冤罪だな。それに、これはたいしたことじゃない。彼女は...」

松本一郎の言葉が終わる前に、夕奈は彼の足を強く踏みつけた。夕奈が人を殺しそうな表情をしているのを見て、彼はすぐに黙り、急いで認めた。「僕が夕奈を悪い方向に導いたんだ。全部僕のせいだよ」