林薫織は星野から房原城治が5号の個室にいることを知った。
星野は彼女を5号個室のある階に連れて行き、「ここまでだ。あとは君自身でなんとかするしかない」と言った。
「ありがとう!」
「いいんだ、以前君も私を助けてくれただろう」
星野が去った後、林薫織は緊張した頭で再び房原城治に電話をかけたが、彼はやはり出ず、最終的に留守番電話に転送された。
明らかに、房原城治は彼女と関わりたくないようだった。
林薫織は携帯を握る指をゆっくりと締め付け、一歩一歩5号個室へと向かった。
個室の入り口には二人のボディガードが立っていた。林薫織は彼らを知っていた。房原城治の専属ボディガードだ。彼らがドアの前にいるということは、房原城治が確実に中にいるということだ。
しかし、彼女が入り口に着くとすぐに、ボディガードに止められた。「林さん、入ることはできません」
「房原城治に会いたいの」
「房原さんは、もう二度とあなたに会いたくないとおっしゃっています」
この結果は林薫織にとって意外ではなかったが、彼女はそう簡単に諦めるつもりはなかった。「今日どうしても彼に会いたいのだけど?」
「それなら失礼ながら力ずくでお帰りいただくことになります」
「ふふ...どんな風に失礼するのか見てみたいわ」
そう言って、林薫織は強引に入ろうとしたが、彼女が一歩踏み出した瞬間、肩をボディガードの一人につかまれた。
林薫織は目を鋭く光らせ、素早く身をかわし、その男の束縛から逃れることに成功し、ドアを開けようとした。
ボディガードはこれを見て、急いで彼女の手を掴んだ。林薫織は力いっぱい振りほどこうとしたが、今回は逃れられなかった。
彼女はほんの少し護身術を学んだだけで、当然ボディガードの相手ではなかった。しかも相手は人数的にも優位に立っていた。
すぐに彼女はボディガードに制圧された。ボディガードが彼女を持ち上げて追い出そうとするのを見て、林薫織は胸が締め付けられる思いで、必死に抵抗しながら大声で叫んだ。
「房原城治、出てきなさい!早く出てきなさい!」
林薫織の声はとても大きく、廊下中に響き渡った。彼女は個室の中の人も確実に聞こえているはずだと思ったが、長い時間が経っても個室のドアは閉ざされたままで、最初から最後まで閉ざされたままだった。