小島風真は試すように口を開いた。「彼女を入れてみますか?」
しかし、返ってきたのは男の冷たい眼差しだった。
「わかった、わかった、何も言わなかったことにするよ」
小島風真がこの件に関わらないと決めたその時、房原城治が突然立ち上がり、大股で個室を出て行くのを見た。
林薫織は必死にもがいたが、力では敵わず、二人のボディガードに引きずられてエレベーターホールまで連れて行かれた。
しかしその時、廊下に房原城治の穏やかな声が突然響いた。
「彼女を入れなさい」
ボディガードは指示を受け、恭しく頷いた。「かしこまりました、社長」
林薫織が個室のドアを開けると、豪華な部屋の中には房原城治の他に二組の男女がいた。そのうちの一人の男性は少し前に会ったことがあったが、残りの人々は彼女には見覚えがなかった。
小島風真は林薫織が入ってくるのを見て、ちらりと房原城治を見た。彼はソファに無造作に寄りかかり、足を組み、長い指でシガーを挟み、冷たい表情は無表情で、喜怒を読み取ることができなかった。
男は顔を上げ、冷たい視線を林薫織の顔に落とし、唇の端に皮肉な笑みを浮かべた。「俺はお前の指一本触れていないのに、妊娠したと?まさか聖母マリアにでもなったのか?」
「妊娠してないわ、ただあなたに会いたかっただけ」
「会いたかった?」男はシガーに火をつけ、一服吸い、鋭い眼差しが煙の中で少し和らいだ。「で、何の用だ?」
数日会わなかっただけなのに、林薫織は房原城治の冷たさと距離感を明確に感じ取った。
この結果は予想していたものの、それでも彼女は勇気を振り絞って言った。「薫理が病気なの」
「それが俺と何の関係がある?」
「彼女の病気はとても重いの。私は...あなたが人脈が広いことを知っているから、もしかしたら適合する骨髄を見つけられるかもしれないと思って...」
「だから俺を頼りに来たというわけか、俺に助けを求めに?」男は彼女の言葉を遮った。
「はい」自分がこんな言葉を言う面目がないことは分かっていても、言わざるを得なかった。
「子供の父親に助けを求めずに、俺に来るとは。林さん、随分と俺を買いかぶっているな」
「私は...」