夜の風が古代の廃墟の隙間をすり抜ける。そこは、今や自らを「クリムゾン・フォージ」と名乗る集団と共に身を寄せるダニエルの隠れ家だった。かつて文明の中心であった古い建物の残骸は、腐敗した権力と圧政に屈しない者たちの巣となっている。
ひび割れた石の壁で囲まれた広場の中央にダニエルは立っていた。日が沈む前、仲間たちは夕方の訓練の準備に忙しく動き回っていた。錆びた長剣や槍といった素朴な武器を丁寧に手入れし、確認する。焚き火の炎に照らされた彼らの顔は、長い戦いの疲労と決意を浮かべている。
クリムゾン・フォージのリーダー、逞しく威厳ある男ハルンが、評価するようにダニエルを見つめた。「お前は一人であの廃墟からやってきた。傷を負い、大きな謎を抱えているな」と言う。「ここは誰でも受け入れるわけではない。だが…お前の中には我々が掘り起こすに値する何かがあるようだ。」
ダニエルは深く息を吸い込んだ。ここで認められるには、生き延びたいという意思だけでは足りない。自身を証明しなければならない。そして最も困難なのは、胸の中でますます暴走するデヴァウアーの力を隠すことだった。
訓練は基礎から始まった。ベテランの一人カエルがダニエルの指導役となった。「今のお前の奇妙な力は忘れろ」と彼は冷たく言った。「まず制御すべきは身体と心だ。戦いの中で心が乱れれば、それは死に直結する。」
以降の日々は過酷な肉体訓練で埋められた。険しい地形を走り抜け、攻防の動きを反復し、敵の動きを読むことを学ぶ。ダニエルは息を切らし、何度も倒れたが、決して挫けなかった。
だが訓練は肉体だけのものではなかった。夜になると、彼は頭の中のささやき声と闘った。血に流れるミスティック・デヴァウアーの力から立ち昇る、かすかな囁きだ。時には誘惑するように力を貪り、出会う者のエネルギーを吸い取れと呼びかける。
彼はその怒りを制御しようと学んだ。支配されないように。しかしその秘密は重く、胸を押し潰す負荷のようだった。
ある雨の夜、静かに廃墟を濡らす雨音の中で、ダニエルはテントの片隅にひとり座っていた。焚き火の揺らめく光が目に映るが、彼の思考は遠くへ飛んでいた。次第に鮮明になる囁きから言葉の断片を聞き取った——「エーテリオン…ミスティック…腐敗…」
その記憶の欠片は彼自身のものではなく、かつて吸収したエネルギーから流れ出しているようだった。それは彼の力が単なる恩恵ではなく呪いでもあることを示す薄暗いヒントだった。世界の神秘の源、エーテリオンは二面性を持つ:神聖な力と腐敗し破壊的な力。
翌日、ダニエルは不安をカエルに打ち明け、答えを求めた。
「お前の力には大きなリスクがある」とカエルは真剣な顔で認めた。「エーテリオンの腐敗に抗えずに堕ちる者は多い。彼らは気づく前に怪物へと変わってしまう。」
だがカエルはもう一つの警告も与えた。それはダニエルにとって新たな疑念の種となった。
「闇の中で我々は誰に従うかを選ばねばならない。俺はただ戦い方を教えるためにここにいるのではない…お前が正しい道を歩むことを確かめるためだ。」
ダニエルはカエルが何かを隠していると感じていた。単なる訓練以上の、もっと暗い何かを。しかし証拠はなく、疑いを口にできなかった。ただ、警戒を強めるしかなかった。
やがてクリムゾン・フォージでの最初の任務が訪れた。彼らは国境地域を脅かすヴァルガンの巡回部隊の情報を得た。ゲリラ戦術で巡回隊を壊滅させ、要塞の防備を固めるのが狙いだった。
ダニエルは偵察と秘密裏の実行者として任命された。敵と遭遇すると、彼はデヴァウアーの力を隠れて使い、一人ずつ敵の力を吸収した。音もなく、周囲の環境に目立った被害も与えず。
仲間たちは犠牲を最小限に抑えた成功に驚嘆した。
「幸運の異端者だ」と年長の戦士の一人がダニエルを警戒と賞賛を込めて囁いた。
だがダニエルにとって、吸収するたびに新たな囁きと、かつて体内にあった別の存在の朧げな記憶が伴った。
帰路の途中、ダニエルは重要なことに気づいた。自分の力は優位をもたらすだけでなく、自己破滅の淵へも連れていくのだと。
静かな夜、星空を見上げながら、彼は心の中で問いかけた。「俺は一体何と戦っているのか?これらのすべては何を意味するのか?」
だが答えはまだ見つかっていなかった。
廃墟の影が彼の新しい家となりつつある今、ダニエルは一つだけ確信していた。旅はまだ始まったばかりだ。