夜、工藤希耀が接待を終えて帰宅したとき、すでに11時を過ぎていた。
夏目初美も、永谷姉さんも、もちろんとっくに寝ていた。
しかし工藤希耀の全身の疲れは一気に消えた。
リビングに突然増えたいくつもの観葉植物を見たからだ。そして、食卓の上には夜の闇の中でも鮮やかに咲く胡蝶蘭があった。
そっと足音を忍ばせて自分の寝室に入ると、ベッドサイドにジャスミンの鉢が置かれていて、近づくと鼻に優しい香りが漂ってきた。
工藤希耀の気分はさらに良くなった。
家は最も温かい帰り場所であり避難所だと言われるのも納得だ。彼は今、それを信じた!
昨日の二人のエステティシャンのマッサージのおかげで、夏目初美はようやくぐっすり眠ることができた。
朝起きたとき、ここ数日より早い時間だったにもかかわらず、顔色は良く、生き生きとしていた。
工藤希耀もまだ出勤しておらず、リビングのバルコニーにあるランニングマシンでジョギングをしていた。
夏目初美は笑顔で近づき挨拶した。「おはよう、希耀。この前の朝は家にいなくて、仕事に行ってたけど、今日はやっと会えたね」
工藤希耀はうなずいた。「おはよう。顔色がいいね、昨夜はよく眠れた?」
夏目初美は急いで笑顔で「うん」と答えた。「とてもよく眠れたわ。昨日家に呼んでくれたあの二人のエステティシャンのおかげよ。私自身思いつかなかったのに、あなたが先に考えてくれて、本当にありがとう」
工藤希耀は言った。「同僚から聞いて、この数日あなたが忙しくて体が疲れているだろうと思って決めたんだ。役に立ててよかった」
ここ二日間、彼が出かけるときはもう8時近かったが、彼女の部屋からは何の物音もしなかった。
彼女の自律心と教養からして、他人の家に住んでいながら毎日昼過ぎまで寝ているはずがない。少なくとも最初はそうではないはずだ。
それはつまり、彼女の睡眠状態がとても悪く、おそらく夜明けになってようやくうとうとと眠りにつけるということだろう。
他のことは隠せても、不眠は隠せない。発熱したときの涙のように、コントロールできないものだ。
工藤希耀はあれこれ考えた末、このように間接的に気を配るしかなく、彼女の役に立てればと思った。
幸い今見る限り、効果は悪くなかった。