夏目初美は夢にも思わなかった工藤希耀がこの時に現れるとは。一瞬呆然としてから、我に返り、「どうしてここに?」
工藤希耀は微笑んで、「もちろん君を迎えに来たんだよ。こんな遅くまで、まだ帰っていないなんて、心配じゃないか。お酒は飲んだ?寒くない?」
大江瑞穂も笑って、「こんな美人の彼女なら、私だって心配するわ。絶対迎えに来るわよ。じゃあ夏目初美、先に帰りなさい。車のキーを私に預けて、後で天海湾まで持っていくから。」
そう言いながら夏目初美に目配せした。
これで夏目初美にも全てが分かった。工藤希耀は今日の同窓会のことを知らないはずなのに、どうしてこんなにタイミングよく彼女を迎えに来たのか。なるほど、ある人の仕業だったのだ。
瑞穂と希耀が彼女のために場を盛り上げてくれているのだから、彼女も彼らの芝居を台無しにするわけにはいかない。
そこで夏目初美は皆に向かって言った。「ごめんなさい皆さん、彼氏が迎えに来たので、先に帰るわ。皆さん楽しんでね。」
同級生たちは皆、目を丸くして呆然としていた。
夏目初美が虚勢を張っているだけだと思っていたのに、まさか本当だったとは。
彼女の彼氏の身長と容姿、その風格と気品を見れば、大げさでなく、男性芸能人の中でも彼に匹敵する人はほとんどいないだろう。
しかも彼はベントレーに乗っている。
さっき大江瑞穂が言っていた通り、彼は天海湾に住んでいるらしい。あそこの家は最小でも200平方メートル以上あり、少なくとも2000万円はする。住めるのは富裕層かエリートだけだ。
確かに水野雄太より百倍も良いじゃないか?
そうだよね、夏目初美の条件なら、優秀な男性が次々と押し寄せてくるのも当然。仕方ない、彼女にはそれだけの資本があるのだから……
クラス長が一番早く我に返り、笑いながら言った。「夏目初美、彼氏も一緒に来ない?せっかくの同窓会だし、次に集まるのは来年か再来年になるだろうし、今帰っちゃうのはもったいないよ。」
すぐに男子が笑いながら同調した。「そうだよ、夏目初美、彼氏も誘おうよ。イケメンさん、こんにちは。僕は夏目初美の大学の同級生、立川国男です。これは僕の名刺です。」
他の人たちも真似して、自分の名刺を差し出した。「イケメンさん、こんにちは……」