店長と店員たちは再び笑顔で夏目初美に他のジュエリーを試着させ始めた。
夏目初美はまだ浪費だと思い、必要ないと感じていた。
しかし女性というものは、どんな年齢であれ、ジュエリーの前では、いったい何人が冷静でいられるだろうか?
すぐにジュエリーのきらめきと店長や店員たちの褒め言葉に魅了され、自分を見失ってしまった。浪費だとか必要ないとかいう考えは、すべて雲散霧消してしまった。
工藤希耀は傍らで夏目初美が試着するたびに嬉しそうにしている様子を見て、目尻や眉の端まで柔らかくなっていた。
なるほど、人に付き添ってショッピングをするというのは、こんなにも心身ともに楽しいものなのか。
では以前、美咲と買い物に行った時、なぜいつも「時間がなぜこんなにゆっくり過ぎるのか」という思いしかなかったのだろう?
工藤希耀がそう考えていると、携帯が鳴った。取り出して見ると、遠山陽介からだった。
そこで夏目初美に一言、「初美、先に試着していて、電話に出てくるから、すぐ戻るね」と言って、
外に出た。「どうしたんだ、陽介?」
遠山陽介は言った:「耀兄さん、何でもないんです。ただあなたたちのことが心配で、奥さんは...大丈夫ですか?美咲のあの気性は、正直言って対処できる人はほとんどいませんから」
工藤希耀は声を低くして、「彼女が来たすぐ後に私も着いたんだ。何も問題ないさ」
遠山陽介はほっとした様子で、「それならよかった。それで、あなたと奥さんは今どこにいるの?午後はまだ会社に戻りますか?契約書にあなたのサインが必要なんです」
工藤希耀は先ほど店長が「ご主人様」と呼び、自分も堂々と夏目初美を「私の妻」と呼べることを思い出した。
気分は前例のないほど良くなり、「今はもちろん結婚指輪を選んでいるところだよ。なかなか良さそうだから、ネックレスやブレスレットも試してみようと思っている。良ければ全部買うつもりだ。契約書が急ぎなら、君がサインしておいてくれ。急ぎでなければ、明日会社に行ったときにサインするよ」
遠山陽介は笑い出した。「もう結婚指輪を選んでいるんですか?耀兄さん、あなたの効率の良さには本当に感心します。まさに神業ですね」
工藤希耀は咳払いをして、「そうだな、こういうことは迅速に決めるべきだ」