竹野心はもう目の前が真っ暗になり、気を失いそうだった。
七百八万円だ。七十八万円でもなく、ましてや七万八千円でもない!
それなのに、まばたきひとつせずにカードを通し、レシートを見ることさえ面倒くさがる。一体どれだけの金持ちで、一体どんな人なのだろう?
おまけに芸能人のようなルックスで、イケメンとして認められている水野雄太さえも見劣りするほどだ。見たところ、本当に夏目初美を愛しているようで、少なくとも彼女のためにお金を使い、彼女のために立ち上がって場を仕切る気概がある。
なぜ彼女はこんなにも運がいいのだろう?なぜ彼女はいつも良いことに恵まれるのだろう?
水野雄太と別れたからこそ、目の前のもっと素晴らしい男性に出会えたのだ。もし自分が最初から水野雄太を奪っていなかったら、こんな素敵な男性は彼女のものにならなかったのではないか?
自分のいわゆる「勝利」など、何の価値もないじゃないか!
夏目初美は言い終えると、もう竹野心を見ることもなく、工藤希耀の方を向いた。「希耀、行きましょうか?」
工藤希耀はうなずいた。「行こう」
そして夏目初美に手を出させず、自分で店員たちが両手で持っていた数個のギフトバッグをすべて受け取り、もう一方の腕を曲げて、夏目初美を見た。
夏目初美はすぐに理解し、彼の腕に手を添えた。
店長はすぐに店員たちと一緒にお辞儀をして見送った。「旦那様、奥様、どうぞお気をつけて。またのご来店をお待ちしております」
竹野心については、みんなはすでに十分に彼女の醜態を見たが、もし彼女がさらに笑い者になりたいのなら、彼らも構わない、好きにさせておけばいい。
ショッピングモールを出て、工藤希耀の車に乗り込んだ。
夏目初美はようやく工藤希耀に尋ねた。「希耀、このダイヤモンドが本当に八百万円の価値があるって確信してる?店長が意図的にそう言っただけじゃないの?こんなに高価なものを、もし売れなかったら...さっきカードで払うべきじゃなかったわ。そのお金は家を買ったり投資したりするべきだったのに」
「不動産投資は確かに現金化するのに時間がかかるけど、今の情勢なら間違いなく利益が出るわ。ダイヤモンド投資よりずっといいはずよ」
やっぱり店長に戻って、元の価格で買い戻してもらえないか聞いてみようかしら?