一分後、大江瑞穂の大きな顔が夏目初美のスマホ画面に現れた。「手はどこ?手のアップを見せてって言ったでしょ?」
「……これが6カラットのダイヤ?思ったより大きくないし、特別なところもないわね。どうして666万もするの?冗談でしょ!」
夏目初美は彼女が話し終えるのを待ってから笑いながら言った。「もちろん特別なところなんてないわ。そもそもあれじゃないから。あの指輪は家に帰ったらすぐに工藤希耀に金庫にしまってもらったの。今私が付けているのは、後で自分で選んだ0.8カラットのもの。普段使いにはこれで十分。万が一ぶつけたり傷つけたりしても、そんなに心配しなくていいから」
大江瑞穂は目を丸くした。「そうだったのね。私は豚肉を食べたことはなくても豚が走るのを見たことはあるわ。どうして大きなダイヤを見分けられないわけないじゃない?なるほど」
少し間を置いて、「じゃあ私はそのダイヤを見ることができないってこと?知っていれば一緒に選びに行ったのに。私の人生でこんな視野を広げるチャンスはもう二度とないかもしれないのに」
「えーと……」
夏目初美は咳払いをした。「見たいなら見せられないこともないわ。今すぐ取りに行って見せることもできるけど、彼は今書斎で仕事をしているみたいだから、邪魔するのは気が引けるわ。後で写真を送るか、直接家に来て見てもいいわよ。どっちにしても、私も金庫は開けられるから」
大江瑞穂は驚いた。「あなたに金庫の暗証番号を教えたの?歌いたくなるわ、『これが愛じゃないなら~』」
夏目初美は彼女を白い目で見た。「前からそんなに歌好きだったっけ?彼はもともと指輪は私のために買ったものだから、普段つけなくても私が保管すべきだって言ったの。でも何百万もするものを、どうやって安全に保管すればいいの?」
「彼に家に金庫があるか聞いたら、あるって。だからもちろん金庫に入れるしかないわ。それで彼が言うには、もし私が指輪をつけたくなったときに彼が家にいなかったら不便だから、と言って私の指紋を登録してくれたの」
大江瑞穂はすでに興奮した顔になっていた。「若奥様、偽りの芝居が本物の恋になるのを見られるのも、お祝いの飴をもらえるのも、もうすぐみたいね?」
ふん、彼の策略は次から次へと出てくるわね。