夏目初美は言い終わると、工藤希耀をこれ以上悲しませたくなかった。
再び話題を変えて、「あのね、希耀、私ちょっとお腹が空いたわ。先に食事する場所を探さない?町の東の端にあるあのお店の豆花魚が特別美味しかったの、今もまだ営業してるかしら?」
工藤希耀は顔を横に向けて数秒間気持ちを落ち着かせてから、彼女を見返した。「まだ営業してるよ、相変わらず繁盛してる。ただ、あそこのおばあさんはもう亡くなって、今は息子の嫁が豆花を作ってる。初美がまだ覚えてるなんて思わなかった。じゃあ、行こうか。」
二人は一緒に出かけ、工藤希耀がドアに鍵をかけた後、車を使わずにゆっくりと町の東の端へ向かって歩き始めた。
結局、周りの全てがゆっくりとしていて、その中にいる彼らも知らず知らずのうちにその影響を受け、たまにこうしてペースを落として数日過ごすのも悪くないと感じていた。
しばらく歩いた後、夏目初美は町の変化がかなり大きいことに気づいた。
特に対岸の新町には、多くの高層ビルが立ち並び、一見すると都会とあまり変わらなくなっていた。
夏目初美は思わず感慨深げに言った。「さっきまで、郊外の小さな町はこんなもので、どれだけ長く帰ってこなくても何も変わらないと思ってたわ。でも今気づいたけど、大きく変わってるのね。そうよね、丸10年も経ったんだもの、変わらないわけないわよね?私たち自身だって、すっかり変わってしまったんだから。」
工藤希耀は彼女が自分に対して随分と和らいできたのを感じ、うなずいた。「そうだね、丸10年だよ!」
少し間を置いて、続けた。「新町の方はかなり良く整備されてるよ。町役場と行政センターもそっちに移転したし、老人ホームや病院もある。ショッピングモールやホテル、映画館もあるんだ。初美が興味あるなら、食事の後に案内するよ。」
夏目初美は微笑んだ。「それにはあまり興味ないわ。どこの都市化も結局似たようなものでしょ。私はむしろ中学校を見に行きたいの。当時はたった一学期しかいなかったけど、印象はとても深いの。せっかく戻ってきたんだから、見に行かないと後悔するわ。」