工藤希耀は笑顔を崩さず、「大丈夫だよ、あの山道を行こう。ちょうど初美に話したいことがあるんだ。君が言い出さなくても、僕から提案するつもりだったよ」と言った。
そう言いながら、彼は前に歩き出した。
夏目初美はその様子を見て、仕方なく後に続いた。
二人はすぐに山道の入り口に着き、石段を一段一段上っていった。
夏目初美は心の中でまだ気まずさと申し訳なさを感じていた。工藤希耀がずっと黙っているのを見て、話題を探して言った。「こんなに年月が経ったのに、この道はほとんど変わってないね。あ、でも変わったところもあるか。あずまやが増えたし、あの二本の松の木も大きくなったね」
工藤希耀はうなずいた。「確かに変わったところはある。あの寮の建物は明らかに改装されているね。昔、僕たちのクラスの男子はあの建物に住んでいたんだ」
だからこそ周辺の茂みや人目につかない場所をよく知っていて、彼をいじめるのにも都合が良かったのだろうか?
夏目初美は足取りが重くなり、余計なことを言ってしまったことをさらに後悔した。
どうして話す前に考えなかったのだろう?
工藤希耀の表情は相変わらず悪くなく、むしろ彼女を気遣っていた。「初美、さっき靴が歩きにくいって言ってたけど、足が痛いの?よかったら、僕が背負って...あ、もし気にしないなら...」
夏目初美は慌てて笑った。「足は痛くないよ、まだ歩けるし、大丈夫」
工藤希耀はうなずいた。「それならいいけど、あのあずまやで少し休もうか」
二人は階段を上り続け、すぐにあずまやに到着した。
工藤希耀は夏目初美が座るのを待ってから、咳払いをして真剣な表情で彼女を見た。「初美、さっき話があると言ったけど、今から話すね。この道は、かつて僕が最も憎み、最も嫌悪していた場所だった。当時、僕はこの辺りでいつも罵られ、いじめられ、屈辱を受けていた」
「高校三年の前期まで、僕はずっとここが大嫌いだった。何度も自分に言い聞かせたよ、大学入試が終われば良くなる、大学入試が終われば、ここから永遠に離れられる、この町から出て、二度と戻ってこなくていいんだって。でも毎日が苦痛で仕方なかった。三百日以上も、どうやって耐えればいいのかと思っていた」