第105章 本当に良いお母さんだった

夏目初美は心の中でさらに居心地の悪さを感じた。

声をさらに柔らかくして、「希耀、あなたはその時何も知らなかったわ、まだ胎児だったのよ、どうしてあなたを責められるの?叔母さんもあなたを責めたことなんて一度もないと思うわ、彼女はただ母親としての本能に従って、あなたを産んだことを喜んでいたはずよ、きっと一度も後悔したことなんてないわ!」

工藤希耀は頷いた。「彼女は日記に確かにそう書いていた、私を産んだことを一度も後悔したことはないと。たとえ私を産んだことで、彼女は母親を失い、人生をやり直す可能性も失ったとしても、彼女は一度も後悔しなかった。むしろ彼女は私が後悔することを恐れていた、なぜ彼女を母親に選んだのか、なぜ彼女の胎内に宿ったのかを後悔することを。」

夏目初美は鼻が酸っぱくなってきた。「叔母さんは本当にあなたを愛していたのね、彼女は本当に素晴らしいお母さんだったわ!」

工藤希耀は自嘲気味に言った。「でも僕はいい息子じゃなかった。実は彼女はその頃若くて美しかったから、町には彼女と結婚して、幸せな生活を送りたいと思っていた男性がたくさんいた。でも彼女の条件はいつも、私も一緒に引き取ること、そして将来私が大学を卒業するまで全力で学費を出すことだった。」

「もちろん相手は嫌がった、女の子なら嫁に出せばいいけど。それに全力で学費を出すなんて、誰だって勉強にはお金がかかるって知ってる、私に出したら、自分の子供はどうするんだって。」

「そうして徐々に仲人も訪れなくなり、彼女と結婚したいと思う人もいなくなった。でも私たちの生活はますます苦しくなり、お金を稼ぐ方法もなく、頼る人もいなかった……私があの半年以上、陽介と毎日食べ物に困り、ほとんどの時間を橋の下で寝て過ごした時、自分を養うことがどれほど難しいかを知った。」

「彼女はその頃、自分だけでなく私も養わなければならず、どんなに大変でも私の学費を出さなければならなかった。彼女がその時どうやって乗り越えたのか、最終的にどうしてもやむを得ず、あんなことを……」

夏目初美は思わず彼をきつく抱きしめた。「希耀、私は降りて自分で歩くわ。歩けるから、あなたが手を繋いでくれるだけでいいの。」