第145章 無事献殷勤

翌日、工藤希耀に抱かれたまま自然に目覚め、昼食を食べた後、夏目初美は車を運転して和歌山市への帰路についた。

ちょうど休暇前の帰省ラッシュで、道中はあまりスムーズではなかった。

それでも何とか5時半の日没前に、自分のマンションの駐車場に車を停めることができた。

双葉淑華は上の階から初美の車を見るとすぐに階段を駆け下りてきた。

車が停まるとすぐに笑顔で駆け寄り、「希実、やっと帰ってきたわね。道中は順調だった?寒くなかった?お腹空いてない?食事は全部準備してあるわよ、家族全員があなたを待ってるのよ」

初美は車から降りると、まず母親を上から下まで見渡し、新しい服を着ているようで、顔色も悪くないことを確認した。

それから初めて笑顔を見せ、「お母さん」と一言呼んだ。「道は少し混んでたけど、車の中は寒くなかったし、お腹も空いてないわ」

双葉淑華は娘の顔色が良く、少し太ったようにも見えることに気づいた。

彼女も笑顔になり、「お正月だもの、渋滞しないわけないわ。渋滞しない方がおかしいくらいよ。希実、この間はどう?元気そうね。電話で毎回『元気よ』って言ってたのは嘘じゃなかったのね。安心したわ」

初美はうなずいた。「もう大人なんだから、自分のことくらい自分でできるわ。心配しないで」

双葉淑華はさらに言った。「ここに立ってないで、風が強いから早く家に入りましょう。荷物はトランクにあるの?開けて、お母さんが持ってあげるわ」

しかし初美はすでに前に歩き出していた。「まずは上に行きましょう。荷物のことはあとで」

彼女はいわゆる「家」に泊まるつもりはなく、荷物を持ち込む必要もなかった。食事が終わったら、そのままホテルに行くつもりだった。

双葉淑華は母親として、少し考えただけで初美の意図を理解した。

急いで笑顔で言った。「希実、お正月なのに、家に帰ってきたのに、ホテルになんて泊まれないわ。安心して、部屋はもう準備してあるわ。あなた一人で使えるし、誰も邪魔しないから」

初美は歩き続けながら言った。「家には3部屋しかないのに、今は7人もいるでしょ。しかも皆大人なんだから。私がホテルに泊まった方が、みんな楽じゃない?」

「でも…」

双葉淑華がまだ何か言おうとしたとき、初美はすでにエントランスに入っていた。

彼女は仕方なく、苦い表情で後を追った。