阿部夫人は、ここまで来ても工藤美咲が工藤希耀を無条件に信頼し、支持していることに驚いた。
こめかみがピクピクと痙攣する。
必死に反論する。「あなたの従兄がどうして大きな過ちを犯すことがあるでしょう?彼にそんな度胸があるわけないじゃない。彼はいつもあなたの顔に泥を塗らないように、常に自分を厳しく律しているのよ。彼が、彼が仮に間違いを犯したとしても、それは許せる小さなミスに過ぎないわ。それに、彼が罠にはめられたという可能性だってあるじゃない?」
「結局、私たち母子を快く思わない人たちがいるのよ。大晦日でさえ、私たちを穏やかに過ごさせたくないなんて、彼らに何ができないというの?」
しかし美咲は依然として希耀の味方をした。「叔母さん、兄さんが会社を引き継いで以来、彼の仕事のやり方は公平公正だと誰もが認めています。工藤家も彼のリーダーシップの下で何倍にも成長し、トップ企業になったんです。会社に関することなら、私は兄さんの決断を無条件に信頼し、支持しています。」
「会社は兄さんが管理していて、私は一度も後顧の憂いを感じたことがありません。父さんもあちらで何の心配もしていないはずです。だから叔母さん、もう言わないでください。従兄が過ちを犯したのなら、罰を受けるべきです。せいぜい私にできるのは、兄さんに軽い罰で済ませてもらえるよう頼むことくらいです。」
阿部夫人は泣き出した。「じゃあ私は、あの子がアフリカに送られるのをただ見ているしかないというの?誰だってアフリカが貧しくて遅れていることを知っているわ。神戸市とは比べものにならない。あの子をそんな所に送るなんて、明らかに死に行かせるようなものじゃない!」
希耀と遠山陽介は目を合わせ、二人とも呆れた表情を浮かべた。
陽介は無理に笑いながら言った。「叔母さん、アフリカにはたくさんの国があり、多くの大都市があります。神戸市より遅れているわけではありませんよ。耀兄さんが潤をそこに行かせるのは、確かに罰ではありますが、同時にチャンスでもあります。彼がそこで良い仕事をすれば、大功労者になれるし、会社が株を与えることだって不可能ではありません。あなたが言うほど危険なことではないんですよ。」
阿部夫人は不機嫌そうに言った。「じゃあ、あなたはなぜ行かないの?他人事だから何とでも言えるわね!」