第160章 すべてを癒す良薬

大晦日。

朝、夏目初美が工藤希耀のキスで目を覚ました時、顔色も気分もずっと良くなっていた。

朝食を済ませ、工藤希耀がまだ彼女を心配しているのが明らかで、それを我慢して、彼女に気づかれないようにしているのを見た。

彼女は思わず笑った。「本当に大丈夫よ。悲しみの極みは心が死ぬことだけど、もう彼女に絶望したんだから、どうして長く悲しむことがあるの?彼女は食べ物も飲み物もなく、路頭に迷っているわけでもないし、病気でもない。毎月お金をもらっているし、この世の多くの人よりずっと良い暮らしをしているわ。」

「殴られたり罵られたり辛い思いをすることについては、明らかに彼女はそれを楽しんでいるから、昨日言ったように、私はもちろん尊重して祝福するしかないわ。だから愛しい旦那様、あなたの愛しい奥さんのことを心配しないで。彼女は本当に元気よ。あなたがそばにいるから、何でも許せるの。あなたは彼女のすべてを癒す万能薬なのよ。」

病気を治すだけでなく、心も体も一緒に癒すことができる、まさに家庭旅行、人殺し...まあいいか、とにかく彼女の必須の良薬だ!

工藤希耀の眉間がようやく緩んだ。

笑いながら後ろから夏目初美を抱きしめ、「『愛しい旦那様』は『旦那様』より聞こえが良いね。愛しい奥さん、もう一度言ってくれない?」

夏目初美は振り返って彼を見つめた。「さっき起きた時、もうたっぷり甘えたでしょ。まだ足りないの?実家に帰って新年を過ごすんじゃなかったの?早く支度して、早めに帰りましょう。美咲を長く待たせないで。あなたが昨夜帰らなかったから、彼女はきっともう不機嫌になってるわ。」

彼女は昨日気分が悪すぎて、こういうことを考える余裕もなかったが、今思いついたからには、もちろん何もなかったかのようにはできない。

工藤美咲は明らかに希耀との間に溝ができていて、さらに火に油を注ぐようなことをすれば、兄妹の情は完全に終わってしまう。

しかし工藤希耀は言った。「初美、僕と一緒に実家で新年を過ごそう。これは僕たちが一緒になって初めての年だから、意味が違う。本来なら一緒に過ごすべきだ。君にも家族がいて、家族と団らんしたいだろうと思って、僕たちは別々に過ごすつもりだった。」