第179章 危機の瞬間

工藤美咲は最後の大男も去ってから、やっと大きく息を吐いた。

彼女は今まで恋愛経験はなかったが、基本的な常識は理解していた。先ほどの二人の男の色気のある様子と彼らの言葉を思い出す。

夏目初美が薬入りのコーヒーを飲んだ後、体に力が入らないだけでなく、顔色も異常に赤く、何かを必死に我慢しているような様子だったことを思い出した。

そうだ、彼女はあの時「あなたは私が他の男に犯されたと思っているの」と言っていた。もしかして、いとこは彼女を騙したのか?

そうなると初美はこれからどんな目に遭うのか、あるいはもう何かが起きているのか……

美咲はそれ以上考えることができなかった。ほとんど取り乱した状態で自分の携帯を取り出し、震える手で太田一鳴に電話をかけた。「一鳴兄さん、早く来て、私が間違ってた、私はもうダメだ……早く来て……」

一鳴が電話を切ると、彼女は急いで震える手で阿部潤に電話をかけ始めた。

いとこにすぐに彼らを止めさせなければ!

しかし残念ながら、阿部潤の電話も阿部夫人の電話もつながらなかった。

美咲はますます焦り、警察に通報しようかとさえ思った。

一方、遠山陽介は最後の書類に署名を終え、ちょうど退社しようとしていた。

そこへ太田一鳴から電話がかかってきた。「陽介、早く義姉さんを助けに行って!美咲が阿部親子に利用されて、義姉さんに薬を飲ませて、二人の男に連れ去られたんだ。美咲は彼らがどこへ連れて行ったのか、ナンバープレートなども分からないらしい。もう調査を始めさせたし、すぐに事件が起きたカフェに向かうところだ。」

「すぐに車で出発して、XX大通り方面に向かって。ナンバー情報が分かって、車がどこに向かっているか分かり次第、すぐに連絡する!」

陽介の顔は青ざめていた。「彼女は頭がおかしくなったのか、こんなことまでするなんて。あの親子の悪意はすでに彼女に伝えたのに、一言も聞き入れず、さらにひどくなった!」

殺意すら湧いてきたが、自分を落ち着かせなければならなかった。「耀兄さんには連絡した?早く彼に知らせて、すぐに戻ってくるように言って。間に合うかどうかに関わらず……きっとその時、義姉さんが一番会いたいのは耀兄さんだし、一番必要なのも耀兄さんだ。」