工藤希耀は無表情で言った。「前にも言ったように、初美が私と結婚した以上、彼女は私にとって最も大切な人だ。私の両親も子供も兄弟も後回しになる。彼女が私のせいで少しでも辛い思いをすることは、絶対に許さない」
「だが今回は、彼女に辛い思いをさせただけでなく、あと少しで彼女が...。夫として、彼女が求めなくても、きちんと責任を取らなければならない!」
工藤美咲は泣きながら言った。「私、初美さんに謝ります。許してもらえるよう頼みます。もし初美さんが私を許してくれるなら、お兄ちゃんは出て行かないで。ママはもういないし、パパもいない。私の家族はお兄ちゃんだけなの。もしお兄ちゃんまでいなくなったら、私...」
太田一鳴は急いでティッシュを彼女に渡した。
そして彼女のために取り成した。「耀兄さん、あなたの気持ちはわかります。嫂さんは今回、まったくの災難でした。夫として、確かに彼女に説明責任がありますよね。でも罪を問うにしても、軽重をつけるべきではないでしょうか?あの母子は首謀者で、どんな罰を受けても当然です」
「美咲は共犯者として、もちろん罰を受けるべきです」
「でも彼女は確かに利用されましたし、すぐに目を覚まして私に電話をかけ、最悪の結末を避けました。裁判官でさえ、この二点を考慮して減刑するでしょう。だから耀兄さんも、彼女に軽い罰を与えて、もう一度チャンスをあげてはどうですか?」
そして陽介に声をかけた。「陽介、あなたも耀兄さんを説得してください。長兄は父のように、長嫂は母のようだと言いますが、親として子供が間違いを犯したとき、できるだけ寛容に導き、改心させて新たな出発をさせるべきではないでしょうか?」
遠山陽介も同調した。「そうだよ、耀兄さん。美咲が本当に自分の過ちを認めたのなら、彼女にもう一度チャンスをあげたらどうだい?事態がここまで発展したのは、兄貴にも全く責任がないとは言えないだろう?」
希耀は黙り込んだ。
陽介は一鳴に目配せした。「一鳴、とりあえず美咲を家に送ってやってくれないか?嫂さんの具合が良くなったら、また来ればいい。嫂さんが目を覚まして美咲を許してくれれば、耀兄さんも何も言わなくなるだろう」
一鳴は意図を理解した。
美咲が泣いて頼んだからといって、耀兄さんがすぐに許してしまったら、簡単に手に入れたものは大切にしないだろう。