第201章 気にしなくなったらあなたは何なのか

遠山陽介たち三人が去った後。

工藤希耀はようやく夏目初美を抱きしめ、彼女の髪に顔を埋めて囁いた。「初美、ハニー、どうしてこんなに優しいの?こんなに僕を愛してくれるの?君が全部僕のためにしてくれたことだって分かってるよ。僕が板挟みにならないように、美咲にあんなに寛容だったんだね。前世で一体どんな徳を積んだんだろう?」

初美も彼を優しく抱き返し、彼の胸に顔をすり寄せた。

そして笑いながら言った。「いつからそんなにあなたを愛してるって言ったの?随分と自惚れてるわね。私が美咲を許したのは、彼女が本当に許せる人だったからよ。謝罪の態度も十分に誠実だったし、すぐに200万円の寄付を申し出たからでしょ?」

希耀は軽く彼女の唇をつまんだ。「この口も強情じゃないね?とにかく、君が全部僕を愛してるからだってことは分かってるよ」

初美は顔を上げて彼を見つめた。「なんて偶然、私もある人が私を愛してるからって知ってるわ。自分で築き上げた帝国まで手放しそうになるほどね。だから私が少し寛大になれば、みんなが幸せになれるなら、そうしない理由はないでしょ?」

希耀は申し訳なさそうに小声で言った。「ただ、初美に申し訳ないと思って...でも実際、美咲をどう厳しく罰すればいいのか分からなくて、自分が身を引くしかないと思ったんだ」

初美は急いで笑った。「あなたが去ってしまったら、私はお金持ちの奥様にも、社長夫人にもなれなくなるじゃない。それこそ私に申し訳ないわよ。だって皆、私がお金持ちの家に嫁いだって知ってるのに、実は紙で作られた偽物のお金持ちだったなんて?冗談よ、冗談」

「私は本当に工藤先代社長を見ただけで、何でも許せるわ。それに美咲は本心では悪い子じゃない、ただ騙されて利用されただけよ。この機会に義理の姉妹の関係を改善できるなら、むしろ災い転じて福となすだわ。さっき彼女が私のことを『お姉さん』と呼んで、心から私を褒めてくれたでしょう?以前なら考えられなかったわ」

希耀は冷ややかに鼻を鳴らした。「彼女がこれでも心から服従しないなら、本当に救いようがないな」