正月が過ぎると、天気は徐々に暖かくなってきた。
大江瑞穂の父親の病状はますます深刻になり、医師によれば、あと1、2ヶ月の命だという。
瑞穂は病院で過ごす時間が増え、それに伴い夏目初美も前例のないほど頻繁に病院に通うようになった。
この日の夕方、初美はいつものように家に帰って永谷姉さんに特別に頼んでおいた煮込みスープを取り、病院へ急いだ。
しかし大江家の三人は病室にはおらず、隣のベッドの人に尋ねると、大江お父さんが突然容態が悪化し、救急処置室に運ばれたことを知った。
初美は急いで救急処置室へ向かった。
そこでは瑞穂と大江お母さんが顔を青ざめさせ、目を赤くし、恐怖に満ちた表情で救急処置室のドアを見つめていた。まるで次の瞬間、ドアの向こうから医師や看護師が出てきて、最悪の知らせを告げるのではないかと恐れているようだった。
初美の気持ちもますます重くなり、静かに前に進み瑞穂の手を握った。「瑞穂、おばさん、心配しないで。おじさんはあなたたちが外で待っていることを知っているから、きっとこの危機を勇敢に乗り越えるわ」
瑞穂は初美が来たのを見て、無理に笑顔を作った。「初美、また来てくれたの?来ないでって言ったのに。あなたは忙しいのに。お母さん、少し座りましょう。初美の言う通り、お父さんは私たちが外で待っていることを知っているから、きっとすぐに出てくるわ」
大江お母さんは苦しそうな表情で言った。「今は彼の言うことが通るわけじゃない、医者の言うことさえも...。昔はタバコを減らせ、お酒を控えろと何百回言ったことか。一言でも聞いてくれていたら、今こんなことにはならなかったかもしれない。まだ20年、30年は生きられたのに...」
瑞穂は母親が話しながら泣き出すのを見た。
急いで小声で言った。「お母さん、今そんなこと言っても仕方ないわ。医師を信じるしかないの。それに、お父さんは家に帰りたいって言ってたでしょう?今回乗り越えられたら、家に連れて帰りましょう。自分が故郷に戻れると知れば、もう悔いはないはずよ」
初美も急いで言った。「おばさん、過去のことは過去に。大切なのは今と未来、おじさんに悔いを残さないことです」
二人は大江お母さんをしばらく慰め、ようやく彼女を落ち着かせることができた。