第211章 節度を守らなければ

遠山陽介は相変わらず安定した運転を続けながら、「大丈夫ですよ、お姉さん。400ccの献血くらいで何も影響ありませんから。この車は女性が運転するのにも向いていますし、そんなに遠くないので、このまま私が運転しましょう」と言った。

「だめ、すぐに車を止めて!」

夏目初美は強く主張した。「たとえあなたの車の運転に慣れなくても、代行を呼べばいいわ。とにかくあなたはもう運転できない状態よ。私、大学生の頃に災害地域のために献血したことがあるの。O型の血液が足りなくて、思い切って400cc献血したの」

「結果、10分以内に2回も気を失って、瑞穂と他の二人のルームメイトをひどく心配させたわ。あなたも今400cc献血したうえに、さっきは人を殴ったでしょう?どうして影響がないなんて言えるの?少なくとも3、4日は休養が必要よ」

彼女は陽介に手を出させるべきではなかった。彼女自身が逃げ出せればそれで十分だったのに。

それに今日はずっと後悔ばかりしている。なぜこうなったのかと。

遠山陽介は胸がじんわりと温かくなり、初美の強い意志に逆らえなかった。

ウインカーを出して車を路肩に停め、「お姉さんはそんなに細いし、女性だから400cc献血したら耐えられないのは当然です。でも私は男ですから、本当に大したことないんですよ」と言った。

初美はすでにシートベルトを外していた。「それは男女関係ないわ。それに、さっきは殴り合いもしたでしょう……陽介、手足は痛くない?力の作用は相互的だって知ってるでしょ。敵に千の傷を与えて自分が五百の傷を負うなんて割に合わないわ」

陽介は微笑んだ。「お姉さんは知らないかもしれませんが、私は最初、耀兄さんのボディーガードとして育てられたんです。だから、人を殴るのは私の専門分野で、自分を傷つけるようなことはありません」

話している間に、二人は席を交換していた。

陽介は初美に簡単な操作方法を説明し、彼女はスムーズにエンジンをかけ、ゆっくりと車の流れに合流した。

ほっと一息ついて、「思ったほど難しくなくてよかった。私の身長でも何とかなるし、無人運転みたいにならなくて良かったわ。あの、陽介はどこに住んでるの?まずあなたを送って、それから私はタクシーで帰るわ」