第212章 恨みを忘れず、身内を守る

遠山陽介は夏目初美の背中が見えなくなったことを確認してから、視線を戻し、車に乗り込んだ。

彼の頭はずっと少しふらついていたが、先ほどの貴重な二十数分間の二人きりの時間と比べれば、多少の頭痛など何でもなかった。

むしろ、彼は頭がふらつくのは献血をした後に手を出したせいではなく、今も車内に漂う彼女の微かな香りに酔っているのではないかと疑っていた。

しかし、これまでだ。

先ほどの盗んだような時間があっただけでも、彼は十分満足していた。

それ以上は望むべきではないし、望んではいけない!

そして今回耀兄さんが戻ってきたら、彼も去らなければならない。

アフリカへの赴任を耀兄さんはずっと反対していた。彼がここまで粘っても、耀兄さんは首を縦に振らず、むしろアフリカ市場を一時的に諦めるほどだった。

だったら彼が岡山市に行き、岡山市のプロジェクトを成功させて、そこを担当することにすれば、いいだろう?

そうすれば、耀兄さんが彼を必要とする時はいつでも戻れるし、耀兄さんが彼に会いたくなったら、同じように簡単に会える。

そうすれば耀兄さんと義姉さんの関係に影響を与える心配もなく、いつの間にか義姉さんを困らせることもなくなる。

例えば先ほど、あんなにタイミングよく現れたら、義姉さんの心の中でどうして少しも疑いを持たないことがあるだろうか。彼女の物言う目には、すでに書かれていたではないか?

彼女は先ほどの道中、ほとんど針のむしろに座っているようで、明らかに居心地が悪そうだった。彼女が常に隠そうとし、自然に見えるように笑顔で話していたとしても。

しかし彼女の体が無意識に緊張し、警戒していることは、誰の目にも明らかだった。

時間が経つにつれて本当に三人の間のしこりになるくらいなら、思い切って別れ、すぐに去って、時間が全てを薄めるのに任せた方がいい!

初美は家に戻り、ちょうどお風呂に入ろうとしていた。

病院から帰ってきただけでも細菌だらけだったのに、さらに汚いものにも遭遇した。今は切実にお風呂に入りたかった!

そこへ工藤希耀からビデオ通話がかかってきた。「ハニー、旦那のこと恋しくなった?旦那はもう疲れ果てて、ハニーのことも恋しくて気が狂いそうだよ。今日はやっと早く仕事が終わったから、ハニーとゆっくり話せる。」