第223章 犬に噛み返せなくても、犬を叩くことはできる

夏目初美は冷たい表情を浮かべた。「あなたは方法がないわけじゃない。この状況になっても、まだ二兎を追おうとしているだけ。もし本当に子供を諦められないなら、誰に強制されようとも、どうしても産むでしょう」

「警察に通報することもできるし、いろんな所に助けを求めることもできる。最悪の場合、一度逃げ出して、誰にも見つからない場所で子供を産むこともできる。子供が生まれてしまえば、彼らに何ができるの？赤ちゃんをお腹に戻せるわけ？子供を捨てるよう強制できるの？」

「ただ、そうなれば、あなたは一人で子供を育てなければならない。一生その子に足を引っ張られる。以前計画していたように水野雄太と結婚して社長夫人になり、一生優雅に暮らすなんて言語道断。それどころか、次善の策として雄太よりずっと劣る男性を見つけることさえ難しくなる」

「そんなこと、どうして耐えられる？もちろん、雄太にしがみついて、あなたと子供を一生養わせるのが一番いいに決まってる。もし私が本当にあなたのために口添えして、彼らがあなたに子供を産ませることに同意したら、それは結婚にも同意したことになる。あなたは何の苦労もなく、二兎を追って両方手に入れられる。本当に計算高いわね！」

工藤美咲は冷笑しながら続けた。「計算高いだけじゃなく、道徳的な脅迫も上手いわね。もちろん、ある人の最も得意なのは厚顔無恥さね。よく元妻のところまで来て、元妻に頼み込んで、クズ男とその家族に子供を産ませてくれるよう、結婚を認めてくれるよう口添えしてもらおうなんて」

「私は二十数年生きてきて、厚かましい人を山ほど見てきたけど、ここまで恥知らずな人は初めて見た。今日は本当に目を見開かされたわ！」

周りの野次馬たちも我慢できずに口を出し始めた。「うわぁ、よくもここまで厚かましくなれるわね？今日は本当に目から鱗が落ちたわ！」

「つまり、お腹の大きい方が不倫相手で、美人の方が元妻なの？いや、そのクズ男は何を考えてるの？頭を挟まれたの？こんな美人を捨てて、あんな女を選ぶなんて、相当な変わり者ね！」

「不倫相手になれる時点で、恥なんて何の意味もないでしょ？」

「厚かましい不倫相手と変態趣味のクズ男、ぜひ永遠に閉じ込めておいて。美人お姉さんは逃げ出せて良かった…」

竹野心は今、世界中が自分に敵対しているように感じていた。