第224章 愛人の女と犬は入るべからず

中年男性はマルイ百貨店の総支配人であり、工藤家の幹部の一人でもあった。

ただ、外部の人間はそれを知らないだけだった。

考えてみれば当然だ。誰が暇つぶしに、どこかの百貨店が誰の所有で、どの企業グループが経営しているかなど気にするだろうか?

工藤美咲はすでに笑いながら言った。「大丈夫よ、私と義姉さんはただぶらぶら買い物を楽しんでいただけなの。目の利かない人に出くわさなければ、鷹山叔父さんを煩わせるつもりもなかったわ」

夏目初美は鷹山社長のことを覚えていて、微笑みながら頷いた。「鷹山社長、私たちはただ買い物に来ただけですから、気を遣わないでください」

鷹山社長は慌てて笑った。「では、お嬢様と奥様は買い物をされて、当店に何かご意見やご提案はございますか?すぐに改善させていただきます」

美咲は手を振った。「義姉さんが言ったでしょう?鷹山叔父さんは気を遣わないでって。私たちは仕事で来たわけじゃないわ。保安員を何人か呼んでもらえる?ここに嫌な人がいるから、自分で追い出したいんだけど、手を汚したくないから、保安員の方々にお願いしたいの!」

そう言って竹野心を見つめ、冷ややかに笑った。「さっきあなた、私に何の権限があって出て行けと言えるのか、ここはあなたの家じゃないって言ったわよね?残念だけど、ここは本当に私の家のものなの。私が誰かに出て行けと言えば、その人は出て行くしかないのよ!」

心の顔は七色に変わり、何十回も平手打ちを食らったかのようだった。

彼女はまさか美咲にこんな形で面目を潰されるとは思ってもみなかったし、美咲が工藤家のお嬢様だとも思っていなかった。

いや、彼女はもっと早く気づくべきだった。美咲が初美のことを「義姉さん」と呼び、しきりに「兄」がどうのこうのと言っていたのに——どうしてこんなに鈍感だったのか、本当に頭に血が上っていたのだ!

どうすればいいのか、地面が割れて自分が今すぐ中に入れればいいのに。

特に野次馬たちが興奮して油を注ぎ始めた。「すげえ、この恥かかせ方最高だな、ドラマや小説の展開より面白いぞ!」

「公共の場だから、相手は我慢するしかないと思って図々しくなったのに、まさか相手の縄張りだったとは。百貨店全体が相手のものだったなんて、笑い死にそうだ!」

「これが金持ちの楽しみってやつか。金持ちの楽しみは俺には想像もつかないな……」