一週間後。
遠山陽介は太田一鳴と引き継ぎを終えると、木下沢と他の数人の秘書アシスタントを連れて岡山市へ飛び立ち、岡山市での仕事を始めた。
神戸市では陽介の仕事を太田が引き継いだため、会社の人々は内々に憶測を巡らせた。なぜこんなに突然なのか、遠山社長と社長はいつも離れることなかったのに、今や遠山社長は何の前触れもなく岡山市へ行ってしまった。もしかして、二人の間に何か亀裂でも生じたのだろうか?
しかしそれはありえないはずだ。遠山社長の社長への忠誠心と、社長の彼への信頼を考えれば、太陽が西から昇ったとしても、二人が不仲になることはないだろう。
もちろん、利益は人の心を動かすものだから、絶対とは言い切れないが……
これらの憶測は内々の小さな範囲にとどまり、工藤希耀の耳に入るどころか、上層部の耳にも届くことはなかった。
当然、会社にも何の影響も及ぼさなかった。
太田が陽介の仕事を完全に引き継ぎ、会社全体も以前なら陽介に指示や署名を求めていたものを太田に求めるようになると。
陽介の不在はますます波風を立てなくなり、他人の目には、ごく普通の人事異動としか映らなくなった。
しかし希耀にとって、陽介の突然の離職に適応することは、一朝一夕でできることではなかった。
たとえ二人が以前にも十日や半月、あるいはそれ以上離れていたことがあったとしても。
希耀はまだ適応できなかった。
結局、以前は一時的な別離だと分かっていたし、どんなに遠く離れていても、いつでも電話やメッセージでコミュニケーションを取れば、その距離は無視できるものだった。
今は物理的な距離は近くなったかもしれないが、心の距離は明らかに遠くなった。希耀は何度も陽介の番号を表示させたが、何度も迷った末、結局電話をかけることができなかった。
メッセージも同じだった。文章を書いても、結局送信することができなかった。
今、陽介に何を言えばいいのか分からなかったからだ。仕事の話ばかりでは、兄弟の間はますます遠くなるだけだ。
希耀だけでなく、陽介も同じような状況だったはずだ。
希耀は陽介が自分に電話をかけようとしたかどうかは分からなかったが、二度ほど陽介との会話画面で「相手が入力中です」という表示を見たことがあった。
残念ながら、いくら待っても陽介からのメッセージは届かなかった。