第287章 夫を得ること、かくの如し

双葉学明もかなり興奮していた。

自分の服飾工場が工藤家傘下のブランドの一つの製造パートナーとなり、利益は安定して観るべきものになっていた。二、三年もすれば、和歌山市の服飾業界でトップに立つ自信があった。

そして今、希耀が自ら俊哲をプロジェクトに参加させると申し出てくれたのだ。

彼の見識と資金力で、彼が投資価値があると判断したプロジェクトが儲からないはずがない。

そうなれば双葉家全体が一段階上がり、和歌山市の真の上流社会に入るのも時間の問題ではないか?

しかし学明は興奮を抑え、真剣に工藤希耀に尋ねた。「希耀、君が私たちのために特別に配慮してくれていることは分かっている。でも、ついでならまだしも、もし君に迷惑がかかるようなら遠慮するよ。君という大樹に寄りかかっているだけで、私たちの暮らしは十分良くなっているんだから」

希耀はその言葉を聞いて、学明に対する好感と敬意がさらに増した。

初美は両親との縁がなかったが、こんな良い叔父がいるのは幸運だった。

彼は笑いながら言った。「たかがひとつのプロジェクトで、私に何の迷惑があるというんですか?叔父さん安心してください。さっき叔父さんが私を大樹と言ったでしょう?その大樹に少しは自信を持ってくださいよ」

「魚を与えるより漁り方を教える」という考えがなければ、彼は直接学明親子に利益配分を与えていただろう。

しかし俊哲の能力は明らかに父親に及ばない。若いうちに鍛えておくべきだ。

将来、彼と初美の子供にとって、もう一人の従兄弟がいてくれれば良いではないか?

学明も考えてみれば、工藤家の規模と資本力を考えると、大げさでなく、希耀が望めば、現段階では生死以外に彼を困らせるものはないだろう。

そう思うと気が楽になった。「それじゃあ、厚かましいようだが、また希耀君のおかげで美味しい思いをさせてもらうよ」

希耀は手を振って笑った。「叔父さん、そんな風に言わないでください。みんなで一緒に成功しましょう」

傍らの林田愛子と久山葵も満面の笑みを浮かべていた。「夏目初美、希耀がこうして私たち家族を助けてくれて、本当にどう感謝していいか分からないわ。あなたにも感謝よ」

「そうよ従姉妹、こんな短い間に、義弟と初美がまた私たちを引き上げてくれた。本当に感謝してるわ!」