第288章 素朴な愛の言葉の破壊力は大きい

夫婦は簡単に洗面と身支度を済ませると、外出した。まずは食事へ向かった。

食事を終えると、二人は花と線香、紙銭を買いに行った。

そして、午後の強い日差しが空に広がる中、車で山へと向かった。

遠くから工藤希耀の母の墓地周辺の植物が見えた。前回来た時とは大きく変わり、緑の衣をまとっていた。

しかし彼女の墓は、前回と同じように、ぽつんと寂しげに立っており、かつての孤独で不幸な女性の姿が目に浮かぶようだった。

夏目初美は気持ちが自然と重くなり、希耀に向かって小声で言った。「行きましょう、お墓に。」

希耀の気分は悪くなさそうで、むしろ笑いながら彼女に尋ねた。「緊張してる?ようやく姑に会う醜い嫁だね。」

初美は彼を睨みつけた。「私は前回すでに会ったし、十数年前にも会ってるわ。何が緊張することがあるの?それに、誰が醜いって?誰かさんは口を開く前に少し考えた方がいいわよ。」

希耀は笑った。「確かに、母さんはハニーのことをとても気に入ってたから、十数年前から理想の嫁だったんだ。ハニーが緊張する必要はないね...気をつけて、この枝にはトゲがあるから、刺さらないようにね。何か便利な道具を持ってくればよかった。」

そう言いながら、初美の手を取り、雑草や蔓が生い茂る小道を慎重に通り抜け、希耀の母の墓前に到着した。

初美は希耀の感情が終始穏やかなのを見て、心がようやく少し軽くなった。

彼が花を供え、線香や紙銭の準備を整えると、

初美は小声で尋ねた。「ねえ、この周りを全部きれいに整備し直さない?私たちはこれからきっと頻繁に来るだろうし、何より大事なのは、お義母さん...あっ、お母さんの気分を変えてあげられることよ。」

希耀は彼女を見つめた。「随分と自発的だね、自分から呼び方を変えるなんて...うん、確かにお母さんの方がお義母さんより聞こえがいいね。後で母さんの代わりに、彼女の大切な嫁への顔合わせのプレゼントと改まりのお祝いをあげるよ。」

初美は軽く鼻を鳴らした。「あなたのプレゼントなんて欲しくないわ。私が呼び方を変えたのはあなたのためじゃなくて、元々お母さんのことが好きだからよ。もういいから、線香に火をつけて。」