第291章 重責と長い道のり

夏目初美は工藤希耀を単に慰めているだけではなかった。

彼女は確かに彼の存在と彼の愛情に満ちた支えがあるからこそ、この世で誰も自分を傷つけることはできないと感じていた。

残酷な言い方をすれば、「感情を共有する」という言葉が本当に存在するはずがない。たとえ親子や夫婦の間でも、一方が不幸に見舞われたり、大きな痛みに苦しんでいても、もう一方がその痛みを代わりに感じることはできないし、本当の意味で分かち合うことはできない。

むしろ時間が経つにつれて、疲れや飽きが生じ、いわゆる「長患いには孝行息子なし」となる。

初美も人間だ。特に双葉淑華のような朽ち木のような人間に対しては、例外ではいられなかった。

しかし彼女の心の中には、希耀に対してさえどう表現していいのか分からない、名状しがたい怒りが燻っていた。

翌日神戸市に戻り、三日目に法律事務所に正式に出勤したが、その怒りはまだ燃え続けていた。

ちょうど出勤して間もなく、苦しそうな表情の中年女性がためらいがちに相談に訪れた。「あの...離婚したいんです。子供の父親がいつも私を殴るんです、人間扱いしてくれなくて...でも何度か離婚を申し立てても、うまくいかなくて...彼は感情が破綻していないと言い、まだ一緒にやっていきたいと言うので、みんな彼の味方をするんです。」

「町内会も、市役所も、最近は女性連合会までもが私を諭すんです...弁護士を雇うお金もないし。何度も繰り返すうちに、子供たちまでうんざりして、父親は誰とでも上手くやれる実直な人なのに、なぜ私だけを殴るのか、私も自分の問題を考えるべきだと言うんです...でももう耐えられません、うぅ...」

初美はすぐにこの案件を自ら担当することを決めた。「お姉さん、彼のDVの証拠はありますか?...証拠があるなら良いです。ご安心ください、この案件は私が引き受けます。必ずあなたが無事に離婚して新しい人生を始められるよう手助けします!」

中年女性の涙はさらに激しく流れ出した。「夏目弁護士、本当に助けてくださるんですか?本当に助けられるんでしょうか?でもとても難しいし、私にはお金がなくて弁護士料を払えないから、やっぱり帰ります、お時間を取らせてすみません...」