第292章 彼女を最後まで助ける

大江瑞穂はようやく完全に理解した。「あなたたちがこの二日間、お墓参りに行って何かあったの?それとも、あなたの家族が…また何か問題を起こしたの?」

夏目初美は唇を引き締めた。「和歌山市にいた時、彼女が道端で掃除をしているのを見かけたの。額には包帯を巻いていて、聞くところによると、それは彼女の『愛する』夫が殴ったものだって。それなのに、彼女は夫と姑が自分に優しいと言うのよ。機嫌が悪くない時は皆良い人で、食事も残してくれるんだって…もういいわ、話すだけで気分が悪くなる!」

瑞穂は言葉を失った様子だった。「なるほど、今日あなたが来た時から、何か気分が悪そうで、怒りを抑えているように見えたわ。最初は工藤社長と喧嘩でもしたのかと思ったけど、それはありえないわよね。あの社長があなたを大事にしている様子を見れば、喧嘩なんてするはずがないもの」

「そんなくだらないことで怒っていたのね。もう怒るのはやめましょう。千金をもってしても人の意志は買えないわ。神様でさえ、救えるのは自分を人間だと思っている人だけ。自分を人間とも思わない人は、誰が好きになろうと勝手にすればいいのよ!」

初美は苦笑いした。「本当に後悔しているわ。なぜあの時、和歌山市に一泊すると提案したんだろう。街を回らなければ、見なくて済んだのに。見なければ気にならなかったのに。だから藤姉さんを最後まで助けるつもりよ。誰も彼女を止めることはできないわ!」

瑞穂はすぐに理解した。初美が自分の怒りを藤姉さんの夫や子供たちに向けているのだと。

大人として、仕事でも生活でも、怒りを他人に向けるべきではない。

でも藤姉さんの夫と子供たちがそれに値するなら仕方ない。

そこで彼女は頷いた。「わかったわ。あなたは当面この案件に集中して、今抱えている他の案件も進めればいい。新しい案件は私や他のスタッフが引き受けるわ。どうせ今は夫も家にいないし、両親も元気だから、私が心配することもないわ。暇なのは同じだもの」

初美はまた一息ついた。「じゃあ瑞穂、よろしくお願いね。私も少し気が楽になったわ。心配しないで。でも『今は夫も家にいない』って、どこか寂しそうに聞こえるけど?それに、そのクマは何?今気づいたけど、やっぱり一人で寝るのは辛いのね!」