翌日、夏目初美が目を覚ました時には、すでに日が高く昇っていた。
彼女が目を開けると、見えたのは一片の雑質もない青い空だった。
耳には時折カモメの鳴き声が聞こえ、身体の下にはわずかな揺れを感じる。まるで海の上に浮かんでいるようだった。
初美は一瞬戸惑った後、無言で笑みを漏らした。
なんて間抜けなんだろう。今まさに海の上、自分のヨットの中にいるじゃないか。
そう思いながら、彼女は無意識に横を向いた。すると工藤希耀の寝顔と目が合った。
普段はいつも彼が先に起きているのに、今日のように彼女が先に目覚めて、彼がまだぐっすり眠っているなんて珍しいことだった。
初美は身を起こし、じっくりと夫の完璧な顔立ちを観察し始めた。
彼の豊かな額から始まり、凛々しい眉、黒くて密な睫毛、真っ直ぐな鼻筋、整った唇の形、そして引き締まった顎、さらに顎に生えたばかりの無精ひげまで…本当に完璧でないところは一つもなく、どこを見ても彼女の心を激しく揺さぶり、狂おしいほど愛おしく感じさせた。
こんな顔、こんな人を、自分の一生をかけても見飽きることはないだろう。
初美が夢中になって愛情を注いでいると。
希耀が突然目を開けた。「ハニーはそんなに旦那さんが好きで、見飽きないの?」
初美はその言葉を聞いて、彼がとっくに起きていたことを悟り、甘えた声で言った。「そうよ、見飽きないわ。いけない?さっきから起きてたくせに、寝たふりして私を騙すなんて、どういう人なの。」
希耀は彼女の甘えた様子を見て、思わず身を乗り出して彼女にキスをした後、低く笑った。「僕も今起きたところだよ。おはよう、工藤夫人。」
初美の口元は思わず上がった。「おはよう、工藤さん。でも今まだ朝って言えるの?太陽はもうほぼ真上に来てるわ。少なくとも11時か12時でしょ…携帯見てみるわ。」
そう言って身を伸ばして探した後、ようやく携帯を見つけた。「うわ、もう12時40分よ!だから私はこんなにお腹が空いてるのね。早く起きて支度しましょう、急いで帰らないと。学明おじさんたちは午後に帰るし、涵子と樂予も帰るのよ。私、昨日から今まで彼らと一緒にいられなかったから、見送りもしないと本当に申し訳なくて…あっ…」
言葉が終わらないうちに、突然天地がひっくり返るような感覚に襲われた。