第284章 新婚の夜(下)

山本涵子と織田樂予も法律関連の仕事に従事しており、人の表情を読み取る高いコミュニケーション能力は必須だった。

すでに工藤希耀に会い、希耀も「忠誠心」を明確に示していた。

涵子はまず笑いながら言った。「夏目さん、私と樂予はこんなに大きなヨットを見るのは初めてなの。瑞穂に案内してもらって、あちこち見て回れないかしら?」

織田樂予も急いで笑顔で同調した。「そうなの、お昼ご飯の時に涵子に言ったんだけど、午後はたくさん写真を撮ってSNSにアップしたいって。瑞穂、案内してくれない?」

大江瑞穂の返事は立ち上がることだった。「何を待ってるの?行きましょ、これ以上イチャイチャ見せられるよりマシよ」

夏目初美は頭を振りながら笑って、三人が次々と出て行くのを見送った。

それから希耀に向き直り、「ご飯は食べた?その後どれくらい飲んだの?体調は大丈夫?どこか具合の悪いところは…あら?」

言葉が終わらないうちに、希耀に抱きしめられた。

彼は初美の首筋にすりよりながら、低い声で満足げにため息をついた。「ハニー、やっと完全に僕の妻になったね。みんなも夏目初美が工藤希耀の妻だって知ったんだ!」

初美はくすぐったくて首をすくめた。「バカね、私はずっとあなたの妻でしょ?でも私の夫がバカでもかわいいバカだし、バカでもカッコいいことには変わりないわ。まだ食事したかどうか答えてないけど、お酒の匂いは思ったほど強くないわね」

希耀は愛しい妻の匂いを何度も吸い込み、全身に力がみなぎるのを感じた。

初美から離れると、笑いながら言った。「食べたよ、乾杯が終わったら陽介と一鳴と一緒に食べた。ビーチでも順番に乾杯したわけじゃなくて、全部で3杯だけだから大丈夫」

初美はまだ心配そうだった。「じゃあ酔ってはいないとしても、疲れてるでしょう?今のうちに誰もいないから少し休んだら?」

希耀は眉を上げた。「ハニーは夫が疲れて、今夜は気持ちはあっても体が動かないんじゃないかって心配してる?安心して、めでたい日は元気百倍だよ。少し疲れていたとしても、さっきハニーを抱きしめたら、すべて吹き飛んだ」

「だから、新婚初夜に支障はないよ。百二十パーセント安心していいからね」