第318章 本当に憎い

工藤希耀は嫌な人間をやっと追い払えて、世界が清々しくなったと感じた。

ついに強がるのをやめ、足の力が抜けて地面に崩れ落ちた。

夏目初美は焦って声が裏返った。「お兄ちゃん、大丈夫？どうしてこんなに血が...動脈を傷つけたの？本当にバカなんだから...今すぐ救急車を呼ぶわ、今すぐよ...」

希耀の顔は雨が降りそうなほど暗かった。「陽介、お前は本当にバカだ。あいつらなんかのために、どうしてこんな馬鹿なことを！」

遠山陽介は痛みで顔をゆがめながらも、無理に笑おうとした。「耀兄さん、初美、心配しないで。ちゃんと分かってやったから、動脈や血管は刺してないよ。ただの表面傷さ、見た目ほど深刻じゃない。出血が止まって簡単に縫合すれば、数日休めば大丈夫だよ。」

希耀はまだ目に暗い影を宿したままだった。「表面傷だろうと計算済みだろうと、あいつらにはそんな価値もない！このままにはしておかない、お前の傷を無駄にはさせない！」

陽介は慌てて言った。「耀兄さん、冷静に！彼を社会的に抹殺して名誉を地に落とすのは理論上は難しくないし、停職になって出世コースから外れるかもしれない。でも、もしそれができなかったら？彼はまた権力を握ったままだよ。あんな高官は、一人で今の地位まで上り詰めた人なんていないんだ。」

「正しい人脈さえあれば、どんな大事でも守ってもらえる。証拠を消したり、そもそも発言する機会すら与えないようにすることだって、彼らには簡単なことさ。少なくとも今の私たちには、彼らと戦う力はない。卵が石にぶつかるようなものだよ。」

「それに、もし彼に何かあれば、守ってくれる人がいるということは、壁が倒れれば皆で押し倒すということ。そうなったら、昔の事件が掘り返されるかもしれない。そうなったら耀兄さんはどうする？私はただの表面傷で、それだけで兄さんはこんなに怒って、あいつらには価値がないって言う。もし兄さんに何かあったら、初美と私は発狂してしまうよ？」

初美は電話を終えると、すぐに同意した。「そうよ、あなた。私たちは鼠を追うのに器を壊すわけにはいかない。確かに冷静にならないと。さっきのことがあって、胡さんが戻って話せば、きっと皆を管理して、さっきのようなことは二度と起こらないようにするわ。今回はこれで終わりにしましょう、ね？」